「クラムボンはわらったよ」ずっと憶えているのが不思議ですが凄く印象のある言葉です。
宮沢賢治氏の世界は幻想的で本当に美しいでので大好きです。
「クラムボン」という響きをふと思い出し、一体どんな内容で誰の作品だったのだろうと思って、探していたら宮沢賢治氏の作品だと分かり、手を打って納得しました。
「やまなし」というタイトルと「クラムボン」とを結びつけて連想出来なかったので、この作品を見つけた時は、やっと見つけたような気持ちもあり少し嬉しくなりました。
小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です。
始まりの文章からグッと心を捕まれるやいなや、一気に幻想世界に引きずり込まれました。
二匹の蟹の子供らが青白い水の底で話ていました。 「クラムボンはわらったよ」 「クラムボンはかぷかぷわらったよ」 「クラムボンは跳ねてわらったよ」 「クラムボンはかぷかぷわらったよ」
兄弟の蟹の会話にある「クラムボン」の強烈な印象と、それって何なのだろうと、しばし戸惑ったのですが、ちょっと先に読み進んだら子供の蟹たちが口から出す、泡ぶくのことなんだろうと思い当りました。
それでも本当にそうなのかな?という疑問も残ってしまうのは「クラムボン」という響きの魅力に、蟹の吐く泡ぶくだけで済まされるような気にならないからです。
そこには命を持った「クラムボン」がいるからでした。
蟹がぶくぶくと吐く泡が水面も目指して登って行く情景なのかな?蟹たちはわざと空気を吐いて泡を作って遊んでいるのかな?それは水の中のシャボン玉のようなものなのかな?
「クラムボン」その響きだけで私は一瞬で囚われてしまいました。
この物語は最後に作者である宮沢賢治氏が「私の幻燈はこれでおしまいであります」と締めくくっている通り、自分の目に映る川の中の世界を、私たちにお裾分けしてくれているのでしょう。
どれだけ美しい目を持っていたのでしょうか。
きっと水晶のように潤いのある輝きが常にあり、地上に生活しながらも天国のような世界にいることが出来たのだろうと思いました。
そして希望というものがずっとあり続けていたのではないかと想像します。
最後にたくさんある内の一つで、面白いのに美しい一文を紹介したいと思います。
泡と一緒に、白い樺の花びらが天井をたくさんすべって来ました。 …光の網はゆらゆら、のびたりちぢんだり、花びらの影はしづかに砂をすべりました。
以前に読んだことのある作品を、改めて楽しむという遊びを見つけました。
昔に読んだことのある作品を、時間が経過して価値観や人生観にも以前とは違いがある今、再度読み直してみることが私の一つの楽しみです。
大半のものは内容は忘れてしまっていて、タイトル名と作者だけが記憶に残っている場合がほとんどですので、以前とは違う自分が新しい作品を読むような感じになることが楽しくて、私の遊び心に火を灯してくれました。
久しぶりに読み直してみると、忘れていたはずの内容が思い出されたり、その作品を読むに至った経緯なども思い出され懐かしさも堪能できます。
まさに一石二鳥のささやかな趣味を見つけた気持ちです。
また今では、著作権が消滅した作品が「青空文庫」という電子図書で無料で読むことが出来るので、大変ありがたいことです。
「青空文庫」とは
インターネットの電子図書館が「青空文庫」です。
「本を電子化して、誰でも読めるようにしておくと面白い」という考えから始まった取り組みで、ボランティアの方々のお陰で成り立っています。
著作権が消滅した作品が集められますので古い作品が中心になりますが、古典の名作が無料で読めることは本当にありがたいことだと思います。
日本の名立たる文豪の作品が軒並み揃っていますし、どの時代になっても色褪せない機知に富んだ作品は、後世まで残していきたいものですので、読みたい時に誰でも読めるという発想と、その取り組みは素晴らしいの一言に尽きます。
様々なテキストで読むことができるようですが、私は愛用している電子書籍〈ブックライブ〉で無料で購入できるのでそちらで読んでいます。
実を申しますと〈ブックライブ〉で0円で購入できる書籍を発見したことから、「青空文庫」の存在を知りました。
〈ブックライブ〉も有料の同じ書籍を取り扱っているにも関わらず、「青空文庫」が読めるように取り計らってくれているのにも好感が持てます。
良い発見をしました。
HanaAkari