「ホントだったんだ…インド人が言っていたこと」寄生虫とアレルギーの関係
昔、インドを旅していた時に、知り合ったインド人から聞いたことなのですが、「インド人にはアトピー性皮膚炎や花粉症の人はいない」ということでした。
その理由が「大半のインド人のお腹には寄生虫がいるから」でした。
ギョッとする話だったのですが、嘘のような本当のような話でした。
奇想天外なインドのことだから、その可能性はあるかもしれないと思ったのですが、取り立てて調べないまま四半世紀が過ぎてしまいました。
ふと興味が湧いたので、ちょうど良さそうな書籍をみつけて読んでみました。
それが「体にいい寄生虫|ダイエットから花粉症まで」です。

読んでみると、知り合いのインド人が言っていたことは本当だったことが分かりました。
それも科学的なデータに基づいているから、恐れ入ったものです。
著者の藤田紘一郎氏は、ご自身のお腹で寄生虫を飼い、身をもって人体実験を行ってのことなので、信憑性もありました。
また周囲の人々でも人体実験を行ったようですが、そのようなやり取りや、言動から藤田氏がユーモアのある方だと窺えました。
文章も面白かったので、楽しく読み進めることができました。
おおまかに人体には危険な寄生虫もいるけれども、無害な寄生虫もいて、それどころか有益な寄生虫もいるということが分かりました。
花粉症などのアレルギー症を防ぐ仕組みが可笑しかったです。
人の体内にいる寄生虫がオシッコやウンコをし、それらから産出される特殊なIge抗体によって、シベロンブロックのような現象になるようでした。
寄生虫の排泄物から産出された特殊なIge抗体が、花粉などに反応してアレルギーを起こす通常のIge抗体より先に鍵穴をブロックしてしまっているから、通常のIge抗体は取りつく島がなくアレルギーは起こらないそうです。
人と寄生虫の連係プレーが、先制した防御態勢を作ってしまうそうです。

「生物学」ですが、「哲学」のような印象も受けました。
藤田氏によると、「成り上がりの寄生虫」は人体にワルサをするけれども、大昔から共存してきた「老舗の寄生虫」はそれほどワルサをしないということです。
宿主をやっつけてしまったら、自分も住処を失って共倒れになるから、そのようなヘマはしないのだと。
「共存という道」と、「自滅への道」ですね。
上手く共存すればお互いWIN WINの関係になるけれども、目先の利益だけを見て行動すると、最後には自分の首も絞まってしまうということでしょう。

アレルギーの増加は、寄生虫のことをよく知らずに気嫌いして追いやってしまった人間への代償かもしれないと思いました。
かと言って、あえて寄生虫を自分のお腹の中で飼おうとは思わないところが、罪深いものです。
もう一点、新たな知識として興味深かったのは、人に甚大な悪影響を及ぼす寄生虫「有鉤条虫」からの被害を防ぐために、イスラム教では豚肉を食べることを禁止したという記述がありました。
豚が不浄だからという理由で豚肉を敬遠していると聞きかじった知識で納得していましたが、もの凄く現実的で合理的な理由だったことに、少し嬉しくなりました。
訳の分からない理由で、豚は不浄だとする発想が本当なら理解しかねるからです。
原点を知ることは大切ですね。
また藤田氏はキワモノの先生のようですが、私は共感できる部分が多く、素敵な方だと感じました。
「ウシやトリを食べる人間がまともで、昆虫を食べる人が異常であると誰が決めたのでしょうか」
そのような発言は好きなところです。
HanaAkari