新渡戸稲造の心「大和魂」を台湾の巨星が解説され、私たち日本人に熱いメッセージを還して下さいました。
私は以前に素晴らしい書だと聞き、新渡戸稲造氏が残してくれた「武士道」を読んだことがありますが、正直なところ未熟なうえに、現代の日本語とはかなり感じが違う国語に目が回ることになりました。
古い日本語は「嫌いじゃないけど生理的に無理」と、どこかで聞いたことがある表現が、私には的確に的を得ていると思います。
なので、読書を継続することを途中で放棄しそうになるのを、必死でやせ我慢して読みましたので、ほぼ頭に入らず、血走った眼にまぶたが降りて来るのを我慢するので精一杯でした。
その私には難解だった「武士道」を、人物として魅力のある李登輝氏が解説されていたので、再挑戦してみることにしました。
李登輝氏は台湾を民主化に導き、発展させた人として見習わないといけない巨星ですので、その方が日本人のために記して下さったのなら読むしかないという、意気込みがありました。
それでも「?」が目白押しでしたが、所々に「!」となる箇所もあり、実際の経験談を例にしているので、分かりやすかったのではないかと思います。
「ノーブレス・オブリュージュ」とは、金持ちや身分の高いものは、そうでない人々を助けなければならないという意味だそうです。
指導者なるものの心得を述べているのですが、当然のことながら、私は凡人で路傍の石のようなものですから、少しでも真っ当に生きる為の勉強が目的でした。
読み進めるうちに、「自分はやっぱり日本人なんだな」と感じる場面が多くあるのですが、とっくに薄れてしまって忘れかけている私の日本人の精神でも、疼き出すきっかけになったのは、李登輝氏、新渡戸稲造氏の言葉に何か大切なものがあるということではないでしょうか。
また私が子供の頃に親や周囲の大人から言われた文句が出てきたのが嬉しくて、あの時は理解しようとは思わなかったけれども、何処かに先人の心が今でも残っていたのだと気が付いたのでした。
「そんなことしてたら、笑われるで」という表現が、「そんなことしてたら、怒られるで」と同じようで同じでない、実は日本の「恥の文化」からくる表現だったことを知りました。
「武士は食わねど高楊枝」
「顔で笑って心で泣く」
「大和なでしこ」
「武士の情け」
「敵に塩を送る」
聞き覚えがある言葉の意味が「武士道」に繋がっているようでした。
しかし、よくよく考えてみると日本中を席捲したマンガ、アニメ「鬼滅の刃」などは、まぎれもなく「武士道」を表現しているようですし、そこで感動できる人々の心には「武士道」がまだ生き続けているのかもしれません。
特に「炎柱・煉獄」さんの最後は、「武士道」以外の何ものでも無かったですし、熱いものが自然と込み上げてきたと思うのです。
もしかしたら「鬼滅の刃」に込められた「日本の精神」が、人々の心の琴線に触れて大ヒットしたのかもしれないと空想が広がりました。
「武士道解題 ノーブレス・オブリュージュとは」の中から、個人的に気になった箇所のいくつか。
「Be honest!=正直であれ」
人間すべからく正直でなくてはならない。
ネガティブ気質の私には、何気にビリー・ジョエルの名曲「Honesty=オネスティ」が流れてきました。
But you look for truthfulness You might just as well be blind It always seems to be so hard to give
Honesty is such a lonely word Everyone is so untrue…
だけど、誠実さを見つけようとすると、盲目になった方がいいくらいに見つけるのが難しい。
誠実とはなんて淋しい言葉だろう。誰もがどれほど不誠実なのだろう…
ビリー・ジョエル:「Honesty」より
「Be gentleman=紳士たれ」
私たちは、ジェントルマンとして俯仰天地に恥じない行いをしなければならない。
「少年よ大志を抱け」という言葉が有名なクラーク博士のお話を交えて、日本の教育の歴史の大切な一部を知ることができました。
「太平洋の橋になりたいと思います」=新渡戸稲造の言葉。
若き青年の新渡戸稲造氏が、これ程の大志を胸にアメリカに留学しました。
「もっと自信を持って、自らの意志で、決然と立っていてもよいのではないですか?なぜなら、あなたがたこそ、【日本の魂】の真の後継者なのだから」
李登輝氏から私たち日本人へのメッセージがありました。
「耐え忍ぶ忍耐力を持たないと、本当の勇気というものは出てこない」
「信実と誠実となくしては、礼儀は茶番であり芝居である」
「武士道は非経済的である」
「武士道の良さはというのは、口先だけではなくて、実際に行うというところにこそある」
「止揚」=相反することに調和を見出し、より良いものにする。
李登輝氏は、物質的な豊かさである経済と、伝統、文化の中にある精神性は相反するものですが、そのどちらも大事であり、より良いものは精神性の土台があってこそ成り立つものだと断言されていました。
〈新渡戸稲造〉(にとべ いなぞう)氏と、〈李登輝〉(り とうき)氏の縁
旧五千円札に描かれている人物。
教育者、農学者として、李登輝氏に多大な影響を与えた人物であり、キリスト教徒でもありました。
新渡戸稲造氏は、台湾総督府に農技師として赴任した時期があり、当時、砂糖生産で大きな功績を残しています。
新渡戸稲造氏と李登輝氏は直接には出会っていませんが、新渡戸氏が執筆した「武士道」が二人の縁となり、見えなくても深い絆となったようです。
新渡戸稲造氏の「武士道」は、李登輝氏の生きるべき指針となりました。
1889年、英文で執筆された「武士道」は、世界に向けて「日本の精神」を発信しました。
今度は再び、李登輝氏を通して日本にその精神が還ってきたことに、大切な心と縁の不思議さを感じます。
HanaAkari