ムガール帝国繁栄の鍵は女性⁉ 血脈の奇跡を感じました。
有名なインドの世界遺産「タージ・マハル」にまつわる歴史小説で、非常に面白かったです。
「タージ・マハル」にだけに焦点を当てておらず、〈ムガール帝国〉の華やかさの裏でうごめいた人物たちの血で血を洗う歴史を知ることができ、また想像を膨らますことができたのは幸いなことでした。
私はインドへ旅した際に、インドを代表する観光名所として誰もが訪れる「タージ・マハル」を見た時に鳥肌が立つ感動を覚え、全盛期にはインドの大半に覇を広げたイスラム国家〈ムガール帝国〉には興味がありました。
ですが、勉強嫌いな私ですからそれまでになっていたのです。
一体、ヒンドゥー教の国のインドにどのような経緯でイスラム教の帝国が覇を極め、また衰退したのかなどは詳しくは知らなかったので、物語を楽しみながら〈ムガール帝国〉の歴史を知ることができ、一石二鳥の読書となりました。
インド全域に戦争によって覇を広げていった〈ムガール帝国〉の水面下には、常に陰謀と策略が鎌首をもたげ虎視眈々と機会を伺っている骨肉の争いがありました。
多くの血が流れたことで手に入れた富と覇権の代償は、肉親同士間で流す血の涙だったのではないでしょうか?
優美さの極みのような「タージ・マハル」からは想像も出来ない、〈ムガール帝国〉の壮絶な歴史がありました。
また、皇帝と共にその時代を生きた女性たちの姿が、この物語の心髄だったのだと思います。
「タージ・マハル」はそれらを象徴しながら、現代も静かにインドを見守っているのかもしれません。
〈ムガール帝国〉皇帝には〈チンギス・ハーン〉の血脈があり、帝国を支えた皇后たちには、驚くべきペルシャの一家族の血がありました。
〈ムガール帝国〉初代皇帝〈バーブル〉は、中央アジア、現代のウズベキスタン辺りからシルクロードを移動し、インド(現在のパキスタン)へ侵攻し、インド北部へと覇を広げたようです。
〈チンギス・ハーン〉の血筋があったというのも、度重なる戦を繰り返し覇を成していった〈ムガール帝国〉にも繋がるような気がして、ロマンを感じます。
初代皇帝〈バーブル〉、二代目皇帝〈フマユーン〉、三代目〈アクバル〉、四代目〈ジャハーンギール〉、五代目〈シャー・ジャハーン〉、六代目〈アウラングゼーブ〉へと続きます。
最盛期は「タージ・マハル」を建造した〈シャー・ジャハーン〉の時代だとされ、領土が最大になったのは〈アウラングゼーブ〉の時代でしたが、〈アウラングゼーブ〉の死後、〈ムガール帝国〉は一気に崩壊へと向かいました。
それと同時に驚きの女性の歴史がありました。
三代目皇帝〈アクバル〉の時代に、ペルシャ(現在のイラン)の没落貴族の一家が、起死回生の人生を想起し、同じイスラム教の新しい国〈ムガール帝国〉で一旗揚げようと思い立ったのです。
そして〈ミルザー・ギヤーズ・ベーグ〉と、その妻〈アスマット〉、6歳の長男〈アサーフ・ハーン〉、さらにはインドへの旅の途で生まれた女児〈メフルン・ニサー〉の四人は新天地インドに辿り着きます。
〈ギヤーズ・ベーグ〉一家は〈ムガール帝国〉にて出世の道を歩むことになるのですが、天のいたずらはそれ以上のものでした。
この家族の血脈を持つ女性らが何の因果か、時の〈ムガール帝国〉皇帝に見初められていくのでした。
「タージ・マハル」と直接関係する、この女性たちこそ〈ムガール帝国〉繁栄の裏にあった、もう一つの鍵のようでした。
HanaAkari