このブログは私がバックパッカーとして、1997年9月20日出国~1999年11月16日に帰国するまでの間に訪れた場所を、四半世紀後の私が思い返してみたら、一体何が出てくるのだろうか?という好奇心から古い記憶を辿り、出てきたものを書いてみることを試みたものです。
【いいかげん】緩いのがインド流?ゆるゆるの魅力|旅の玉手箱 インド雑学編-38
【いいかげん】
適当でいいかげんな事は日本では欠点とされることが多いですが、インドではそれが普通のようでした。
もし日本の常識で判断してしまうと、インド人は奇妙で欠点だらけの人種になってしまうでしょう。
ただそれがインド人だと受け入れることが出来た時から、インド滞在がどんどん楽しくなっていきました。
そのような気持ちになるまでは、毎日腹が立つことだらけでイライラが絶えなかったので、外出する時は決戦に挑むような心持ちに切り替えていたものです。
ですから外に出ることは戦いに臨むようなものでしたので、その後の疲労感は尋常ではかったのです。

本当に適当なインド人が多く、いいかげんなものでした。
それなのにインドのことを嫌いにならずに、独特の魅力に魅了されることになってしまったのは不思議なものです。
私はどちらかというと日本の気真面目さが息苦しかったはずなのに、インドでは自分が日本人なのだということを、徹底的に自覚させられました。
根が真面目なので時々行き詰まってしんどくなり、反動で何もかもを投げ出したくなっていただけだったのでしょう。
インドのゆるゆる感覚に身を委ねているととても楽でしたが、「インドに住みたいか?」と尋ねられたら、答えは即答で「いいえ」ですから、やはり日本人の血が流れているのだと思います。
なぜなら汽車は予定の時刻に来ないのが当たり前だったのに、必ず予定時刻の30分前には駅に行き、一向にやってこない汽車を待ってしまうのは、どうにも変えることはできませんでした。
もし私がインド人化を徹底できたら、汽車が遅れてくるのを前提に予定の30分後くらいに駅に行き、稀にまともに汽車が来た場合は乗り過ごすことになりますから、「また明日にしよう」と開き直ることも出来ただろうと思います。
私は出来ませんでした。
ただ、いいかげんは「好い加減」ともいえて、ゆるいのも上手く活用できれば幸福度はうなぎ上りになるのではないでしょうか?
インドの空気感に馴染み始めた時の、あのまったりとした時間とリラックス感は大切な感覚だったと思っています。
日本の生活ではなかなかそのように出来ませんが、昔あった標語「狭い日本そんなに急いで何処へ行く」なんかは、とても素晴らしいメッセージだったのだと、今更ながらに思います。

インドの「いいかげん」よりも日本の「真面目さ」が勝った出来事。
インドのゆるゆるのいいかげんさは、売っていた木や石の彫刻などの彫刻にも表れていました。
彫刻の精度が極めて低いものが多く、それはそれで味わいと取れないこともありませんでしたが…
しかし、そのように思えないケースもありました。
インドは暑い地域が多いですから当然のことながら蚊が多くいて、蚊には悩まされることが多かったです。
蚊が媒介する伝染病の危険もあり、蚊に刺されるのはあまり嬉しくないことですけれど、あまり打つ手はなかったので気にしなくなりましたが、室内に蚊が入り込むと眠れなくなりますから困ったものでした。
通常は天井からぶら下がっている天井ファンを全開で回しながら寝るので、蚊は風によって吹き飛ばされてしまいます。
ただ扇風機を使わない肌寒い時期には、対策として蚊取り線香を使いました。

このインドで売っていた蚊取り線香の役に立たないこと、「まったく、真面目にしなさいよ」と愚痴しか出てきませんでした。
煙はちゃんと出ているけれど、蚊はいっこうに平気で飛び回っています。
しかも煙は非常に煙たくて、人間の私の目はショボショボしているのに、蚊は落ちてこない。
人に厳しく蚊に優しい蚊取り線香は、意味があるのでしょうか?
蚊取り線香としての役割りをちゃんと果たしていないので、いくら見た目が蚊取り線香でも、普通の線香となんら変わりがないのが腹立たしい限りでした。
ある時ですが、宿泊した安宿の部屋の中に蚊が山ほどいたので、インドの蚊取り線香を焚きました。
例の如く、効果が見られないので、何本も同時に蚊取り線香を焚きましたが、部屋の中が真っ白に霞んだだけでした。
仕方が無いので、貴重な日本の蚊取り線香を使ったら、瞬く間に蚊が面白いように落下してきたのです。
ベッドの上の白いシーツには、大量にあの世に行った蚊が降り注ぎ、黒い点々を描きました。
やはりこうでないといけない。
蚊取り線香は、蚊取りをしてこそ意味があるのだと、妙に感心した出来事でした。
蚊取り線香のような些細のなものまで、ちゃんと真面目に作られているのは、日本の良い所だと思います。
HanaAkari