このブログは私がバックパッカーとして、1997年9月20日出国~1999年11月16日に帰国するまでの間に訪れた場所を、四半世紀後の私が思い返してみたら、一体何が出てくるのだろうか?という好奇心から古い記憶を辿り、出てきたものを書いてみることを試みたものです。
【パールヴァティー】美と性の象徴|旅の玉手箱 インドの神様編-20
【パールヴァティー】
女神〈パールヴァティー〉は〈シヴァ〉神の妻として〈シヴァ〉神と共に、インドのヒンドゥー教徒にとても崇拝されていました。
この二神の子になる象の頭を持つ〈ガネーシャ〉も大変人気があり、兄弟には軍神の〈スカンダ〉もいて、〈シヴァ〉一家のカリスマ性は計り知れないものがあったように思います。
また、〈パールヴァティー〉は、ガンジス川の女神〈ガンガー〉の姉でもあります。

〈パールヴァティー〉は女性美を象徴する女神であり、美の集大成なのです。
古代インドの詩人は、彼女の微笑みは珊瑚の上に置かれた真珠だと謳い、女神〈パールヴァティー〉を称賛したようです。
このうえない美の女神を俗な現代風に置き換えると、セックスシンボルのような存在と言えるかもしれません。
それは〈パールヴァティー〉が〈シヴァ〉と共に〈シャクティ=性力〉を象徴する存在とされるからです。
宇宙視点では〈シャクティ〉とは、単に性的能力のみを表現しているのではなく、力の源、本質、生命力、エネルギー、そのようなものを意味するようですが、娑婆では得てして小難しいことは無視され、目の前にある性的快楽を肯定するために解釈されることもしばしばあるようです。
この夫婦の面白いのは、夫の〈シヴァ〉神が多くの異名を持つのと同じように、女神〈パールヴァティー〉も、多くの別名を持っていることです。

ただ、この女神の二面性は驚異的です。
〈パールヴァティー〉、〈ウマー〉などは、美しく優しい慈愛の存在ですが、反面〈ドゥルガー〉、〈カーリー〉などになると、凶暴性を発揮し血と殺戮に荒れ狂い、敵対する強力な悪魔(アスラ)を血祭りにあげてしまう恐ろしい一面を見せます。
特に〈カーリー〉は、血まみれの真っ黒な身体に、長いしゃれこうべのネックレスをぶら下げて、猟奇的に長い舌を垂らしている地獄絵図さながらの様相で凶暴そのものです。
おそらく後付けで、元々は別の女神を〈パールヴァティー〉と結び付けたのでしょうが、開いた口が塞がらないくらい極端な二面性です。
多重人格としか思えない変貌ぶりが可笑しいのです。
ですからヒンドゥー教の神々は、面白いと思います。

日本で〈パールヴァティー〉は、〈波羅和底〉の当て字で紹介されています。
日本では〈パールヴァティー〉の音を漢字に当てはめた〈波羅和底〉の名は存在します。
しかし、夫の〈シヴァ〉神が仏教に取り込まれ〈大黒天〉となり、日本人にも馴染みがある存在なのに対し、〈波羅和底〉は知名度がありません。
〈パールヴァティー〉は日本に来る過程で存在感を薄くしてしまったか、当時のヒンドゥー教界ではまだあまり注目されていなかったのかもしれません。
HanaAkari