このブログは私がバックパッカーとして、1997年9月20日出国~1999年11月16日に帰国するまでの間に訪れた場所を、四半世紀後の私が思い返してみたら、一体何が出てくるのだろうか?という好奇心から古い記憶を辿り、出てきたものを書いてみることを試みたものです。
【南京虫の襲来】闇に忍び寄る習性|旅の玉手箱 アクシデント編-11
【南京虫の襲来】
私が人生で初めて〈南京虫〉によって酷い目に遭ったのはインドネシアでのことでした。
〈南京虫〉は〈トコジラミ〉の別称ですが、バックパッカーの間では〈南京虫〉と呼ぶことが多かったです。
蚊のように吸血し、吸血された場所に激しいかゆみが起こるのですが、そのかゆさは蚊に刺された程度ではなく、とんでもないものでした。
インドネシアの田舎をかなりオンボロのローカルバスで強行移動した時のことです。
途中からうたた寝をしてしまい、目的地に着いた時には日が暮れていました。
手っ取り早く見つけた宿に入り、ひと風呂浴びようと服を脱いで衝撃が走りました。
全身に蕁麻疹のような発疹があり、次第にかゆみが強くなってきました。
腫れあがった発疹箇所が全てがかゆいのですから、堪ったものではありません。
持ち併せていたメンソール系の軟膏を塗りたくって、なんとか誤魔化そうとしましたが、ほんの気休め程度の効果しかありませんでした。
その時はそれが〈南京虫〉によるものだとは分からず、疲労からの異常かと思っていました。
蚊のように〈南京虫〉の姿を確認できれば、その虫に疑いの目を向けたかもしれませんが、〈南京虫〉の特性によって目視できず、謎のかゆみに悩まされたのでした。
後にインドで〈南京虫〉によってもっと酷い目に遭った時に、〈南京虫〉のおぞましい実態を目撃し、インドネシアでのことは〈南京虫〉のせいだったことに気が付いたのでした。
また〈トコジラミ〉とも言われますが、〈シラミ〉の類ではなく、〈カメムシ〉の類なのだそうです。
暗くなると集団で襲来する〈南京虫〉のおぞましさを目撃しました。
インドの安宿では時に、〈南京虫〉による洗礼を受けることがありました。
デリーでいつも利用していた安宿にも部屋によって〈南京虫〉が出没することがあったのですが、インドの安宿は床も壁もコンクリートで、唯一の家具がベッドというのが一般的でした。
そんな何もないような部屋でも〈南京虫〉は出没します。
木製のベッドの木材の中に潜んでいるのです。
英語で〈bed bugs〉と呼ばれるのも分かるような気がします。
ある夜、夜中に違和感を感じ目が覚めました。
身体がかゆいのですが、一度目は眠気の方が勝り、またすぐに眠ってしまいました。
次に目が覚めた時には、かゆみが酷くなっていて「ん、何かおかしいぞ!」という警戒心が起こりましたが、部屋の灯りを点けて周囲を見渡してみても、何も異常があるようには見えませんでした。
身体にかゆみがあるくらいです。
灯りを消し再度眠りに就きかけた時に、肌が異常を感知しました。
急いで電灯のスイッチを押してみて、びっくりしました。
私の寝ていた場所からベッドの奥へと、蜘蛛の子を散らすように小さな虫の大群が去っていくのです。
これが噂の〈南京虫〉かと認識した瞬間でした。
消灯すると再び、音もなく〈南京虫〉は姿を現し迫ってきます。
闇にまぎれてシーツの上を静かに這ってくるのです。
とにかく大群で大きいのから小さなものまで入り乱れていて、おぞましい限りでした。
中には赤黒く染まったものがいて潰してみると、案の定、私から奪い取った血が飛び出しました。
奪い取られた量は、蚊を潰した時の感触よりもはるかに多いようでした。
〈南京虫〉は、灯りを点けるとスーっと引いて行きます。
明るいのが嫌なのだと察知したので、何度か電灯を点けたり消したりしながら〈南京虫〉の動向を観察しましたが、ものの見事に光があると立ち去っていくのが面白かったです。
ですから一抹の不安はあったものの、部屋の電灯を点けっぱなしにしておけば、多分〈南京虫〉の襲来は防げるだろうと思い、その夜は消灯せずに寝て、次の日に宿の人に事情を説明して部屋を変えてもらった次第です。
余談ですが、その部屋が売り止めされることはなく、その日にすぐに新しい旅行者がチェックインしていたのが、実にインドらしいと思う出来事でした(笑)
HanaAkari