「ジョゼと虎と魚たち」 田辺聖子著 を読んで

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ジョゼと 虎と 魚たち 〈日本人〉作品を読んで
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短いストーリーの中に、ヤキモキしながらも、ホッと胸をなでおろす青春の風が吹きました。

下半身に麻痺の障害を持つジョゼの本当の名はクミで、ジョゼは恋人の恒夫のことを管理人と呼ぶ。

ジョゼは嬉しいくせに素直に恒夫にその気持ちを伝えることができず、いつも強がって口の悪い言葉を連発するところが可愛い。

いつかの外出の時に便所に入った恒夫に対して、ジョゼは「あかん。オシッコなんかしたらあかん!生意気や!早よ出え」とどなった。

恒夫は用を足しながら「何ぬかすねん。夫に向かって何ちゅうこというねん」

「夫なんかとちゃう!」

「ほな、何や」

管理人や!あんたは」

ジョゼの口から出任せに出た時以来、恒夫のことを「管理人」と呼ぶことになり、自分はフランソワーズ・サガンの本によく出て来る小説のヒロインが「ジョゼ」という名前が多いことから、気に入って自分は「ジョゼ」になった。

「アタイなあ、これから自分の名前、ジョゼにする」

「なんでクミジョゼになるねん」

「理由なんかない。けど、アタイはジョゼというほうがぴったし、やねん。クミという名前、放下すわ」

ジョゼは車椅子の上から、口悪く小生意気なことを言う可愛くておぼこい女性です。

偶然の出来事から二人は出会い、おばあさんと二人暮らしのジョゼの世話をするようになってから二人の間には、いつしか友達以上恋人未満な関係が始まりました。

独特な関係と二人が交わす会話が、楽しくて架空の世界のことですが、どこかに本当におりそうな二人のように感じました。

虎

恒夫が大学生活に忙しくなりしばらく会わない間に、ジョゼのおばあさんは亡くなり、ジョゼは生活保護を受けながら、一人でアパート暮らしを始めていました。

それを知った恒夫ジョゼを訪ねます。

ジョゼは嬉しいはずなのに素直になれません。

「おい!」とお説教をしたくなりながら、どこかで結ばれようとする二人なのに、すれ違う会話のシーンをヤキモキしながら読みました。

「また、来るわ」と言って立ち上がった恒夫に対して、ジョゼは「来ていらん、もう来んといて!」と返します。

「……ほな、さいなら……」

「なんで帰るんや!…」

「どうせえ、ちゅうねん」

「知らん!」

私は「もうー!」と牛になっていました。

本を読む私の周囲に、青い春の風が流れました。

漂着した手紙入りのビン

アニメーション映画版の「ジョゼと虎と魚たち」

魚群

アニメーション映画となった「ジョゼと虎と魚たち」も映画館に見に行きました。

コロナ禍だったので観客はまばらで、とても映像が綺麗でいい映画なのに残念だなと思いました。

小説の内容からはかなり着色、アレンジされているアニメ版のストーリーでした。

とにかく映像が綺麗で、神秘的だったところにまず引き込まれました。

幻想的な世界は、ジョゼの世界感を映像化しているのでしょう、生意気ですが、心根の綺麗なジョゼの内面をそっくりそのままを映像にしているように感じました。

美しかった。

最後には感動して、涙目になりました。

そういう点では観客が少なくて良かったかもしれません(笑)

少年とクジラ

HanaAkari

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