「罪と覚悟」 オー・ヘンリー著 を読んで

※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています。
罪と覚悟〈オー・ヘンリー〉 〈オー・ヘンリー〉作品を読んで
スポンサーリンク
スポンサーリンク

「よみがえった改心」という翻訳もあるようですが、まさに清算という潔さがあり、気持ちの良い物語でした。

過去に罪を持つ男の前に訪れた幸せ。

そのまま男には普通に幸せになってもらいたかった、そんな気持ちになりました。

ジム・ヴァレンタインは金庫破りの手練れで、刑期を終えて出所するのですが、再び金庫破りの巧みな手腕を使い大金を手にします。

そしてラルフ・スペンサーという偽名で、別人になりすました彼は田舎町にやってきて恋に落ちてしまいます。

エルモアの田舎町にやってきた時は、次なる金庫破りのターゲットを探していたのかもしれません。

恋に身を焦がした彼は、その田舎町に留まり商売を始めます。

愛の力は偉大なりで、スペンサーの商売は成功し、町の人々からは信頼され、意中の女性アナベルとも恋仲になり結婚の約束まで至るのですが…

ピンクのバラ

私はこのままスペンサーには幸せになってもらいたかった。

それでもいいではないかと思うのですが、運命のいたずらか?神の審判か?神のお試しか?金庫破りの過去の罪は清算するように仕組まれていたかのような事態が起こってしまいました。

アナベルの父アダムス氏は銀行家で、彼の銀行でスペンサー、アナベル、アナベルの姉、姉の小さな子供二人、銀行員一同との顔合わせが行われました。

アダムス氏が銀行自慢の新型の金庫を皆に見せて自慢していると、ふざけて遊んでいた子供の一人が金庫に閉じ込められてしまいます。

特殊な金庫だけにアダムス氏でもすぐに開けることが出来ず、開けるには別の町から人を呼んでくる必要があり、時間を要するという絶体絶命の事態が起こってしまったのです。

すぐに金庫を開けないと窒息して子供の命はありません。

スペンサーはスペンサーの仮面を剥がし、ジム・ヴァレンタインに戻りました。

金庫は破られ子供は無事に救出されるのですが、ジム・ヴァレンタインは黙ってその場を去って行くのです。

子供の命を救う為には金庫破りの正体を曝さないといけない、正体が知れたらここには居られない。

愛するアナベルとの幸せな未来を目前に、金庫破りの罪を犯す覚悟を決めたジムの心境は、彼の背中が一番物語っていたはずだと思います。

黙って去って行かざるを得なかったジム・ヴァレンタインの後ろ姿だけが、何かを語る資格があるように思えました。

後ろ姿

ただ彼は金庫破りをする前にアナベルにお願いして貰った、彼女が胸に挿していた薔薇の花のつぼみを、自分のベストのポケットに携えていました。

覚悟を決めたジムの胸で薔薇のつぼみは、最後のアナベルの息吹をそっと漂わせ、彼の勇気を称えていることと思います。

私はそれは白い薔薇だと思うのです。

過去の罪はこれで帳消し、真っ白になってまたゼロから始まりますように。

その時丁度、宿敵である刑事、ベン・プライスがジムを追ってこの場までやってきていたのですが、ベンはそんなジムの姿を見て、スペンサーとして見逃すところがシブくて痺れました。

短い小説ですが何とも言えない心地良い余韻がありました。

白バラ

以前に読んだことのある作品を、改めて楽しむという遊びを見つけました。

昔に読んだことのある作品を、時間が経過して価値観や人生観にも以前とは違いがある今、再度読み直してみることが私の一つの楽しみです。

大半のものは内容は忘れてしまっていて、タイトル名と作者だけが記憶に残っている場合がほとんどですので、以前とは違う自分が新しい作品を読むような感じになることが楽しくて、私の遊び心に火を灯してくれました。

久しぶりに読み直してみると、忘れていたはずの内容が思い出されたり、その作品を読むに至った経緯なども思い出され懐かしさも堪能できます。

まさに一石二鳥のささやかな趣味を見つけた気持ちです。

また今では、著作権が消滅した作品が「青空文庫」という電子図書で無料で読むことが出来るので、大変ありがたいことです。

白いバラ

「青空文庫」とは

インターネットの電子図書館が「青空文庫」です。

「本を電子化して、誰でも読めるようにしておくと面白い」という考えから始まった取り組みで、ボランティアの方々のお陰で成り立っています。

著作権が消滅した作品が集められますので古い作品が中心になりますが、古典の名作が無料で読めることは本当にありがたいことだと思います。

日本の名立たる文豪の作品が軒並み揃っていますし、どの時代になっても色褪せない機知に富んだ作品は、後世まで残していきたいものですので、読みたい時に誰でも読めるという発想と、その取り組みは素晴らしいの一言に尽きます。

様々なテキストで読むことができるようですが、私は愛用している電子書籍〈ブックライブ〉で無料で購入できるのでそちらで読んでいます。

実を申しますと〈ブックライブ〉で0円で購入できる書籍を発見したことから、「青空文庫」の存在を知りました。

〈ブックライブ〉も有料の同じ書籍を取り扱っているにも関わらず、「青空文庫」が読めるように取り計らってくれているのにも好感が持てます。

良い発見をしました。

HanaAkari

タイトルとURLをコピーしました