「風に立つライオン」 さだまさし著 を読んで

※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています。
風に立つライオン 〈日本人〉作品を読んで
スポンサーリンク
スポンサーリンク

感動の歌、歌声、歌詞、そして文章。さだまさし氏の心に翻弄されました。

さだまさし氏の「風に立つライオン」の歌を聞いてから小説も読んでみようと思いました。

「風に立つライオン」はとても素晴らしい曲で、特に歌詞が率直で真っすぐに心に力強く語りかけてきますので、小説を読まずにそのままの感覚にしておこうかと悩みました。

あえて小説を読んで膨らませてしまうと、かえって興ざめしてしまったら嫌だなあ~と思ったのです。

しかし、強い誘惑に負けてしまい小説を読んでみることにしましたら、その膨らませ方に驚かされました。

東日本大震災のことと結び付けてのストーリー展開に、鳥肌が立ちました。

過酷な情勢、状況の中アフリカでの医療に従事する若き医者と、東日本大震災の最中に生きて行くために奔走する青年を重ね、「人とは?」「純粋な強い精神、心とは?」そのようなことにに対して小細工なしに、人の美しさ、醜さ、強さ、弱さ、心の可能性のようなものに身震いさせられる物語でした。

いわゆる感動小説を読んで涙するといったことでは済まされない、自分も少しでも当事者になって考えさせられるような感動がありました。

アフリカに赴任することになった島田航一郎は、戦争によって次々に運び込まれてくる日本で暮らしていると想像も出来ないような悲惨な患者や子供たちと向き合あうことになります。

航一郎は助けられなかった子供の死と直面して酷くショックを受けてしまいます。

先輩の医者からの「君は頑張ったと思う」という言葉に対して、航一郎が言った言葉に彼の人柄が出ていました。

「頑張っても…助けられなきゃ意味がない」

ライオン 孤高

物語は航一郎を知る人々の回想録のような形で構成されているのですが、その一つ一つに考えさせられる内容がちりばめられていていました。

たとえば、現代医術で治療や施術が不可能な病気の場合ですら、治せなければ"駄目な医師"と断ずる人がおり、またそういう噂話ほど早く広く拡がる傾向があるのだ。
そういう風に自分の"誠意"が"結果"によって露骨に裏切られることを幾度か経験すると、医師も人間であるから、悲しみ、憤りを覚え、がっかりし、やがて"その患者"を含む"患者全体"の人間性を諦めてゆく。
つまり医道を諦め始めるわけである。
患者や患者の家族はお前という人格に対して頭を下げているのではないのだ、お医者という幻想に対して平服しているのだ。
誰かのせいにしなきゃ耐えられない悲しみって…あるんだよ
人としての愛情の深さがかえって自分を傷つけたようなもんだよ。
「群れから離れたライオンって……厳しいんですよ」
人は誰でもがんばって生きているのだから、その人に「もっとガンバレ」などと他人が言うべきでない…

真っすぐで綺麗な部分を抜き出してみましたが、それ以外にもこの「風に立つライオン」の物語には、いかに生きるか?ということへの強いメッセージと共に、それに伴って綺麗ごとだけでは済まされない、目を背けたくもなるような現実の情景が描写されていました。

そんな中にも奮い立つ愛と希望が展開して、そして継承されていく流れには目が潤み、胸が熱くなりました。

キリマンジャロ

「風に立つライオン」歌詞全文

私がこの歌の歌詞で特に好きなところは、「故郷ではなく東京の桜が恋しいということが  自分でもおかしい位です おかしい位です」のところです。

切なさが伝わってきます。

この「風に立つライオン」の歌は、歌詞だけでも凄く伝わってくるものがあるのだけれど、さだまさし氏の美しい声が重なった時には、そのオーラはさらに広がるように思います。

朝焼け

「風に立つライオン」

突然の手紙には驚いたけど 嬉しかった  何より君が僕を怨んでいなかったということが

これから此処で過ごす僕の毎日の大切な よりどころになります

ありがとう  ありがとう 

ナイロビで迎える三度目の四月が来て 今更  千鳥ヶ淵で昔君と見た夜桜が恋しくて

故郷ではなく東京の桜が恋しいということが  自分でもおかしい位です おかしい位です

三年の間あちらこちらを廻り その感動を君と分けたいと思ったことが沢山ありました

ビクトリア湖の朝焼け  100万羽のフラミンゴが 一斉に翔び立つ時 暗くなる空や

キリマンジャロの白い雪  草原の象のシルエット

何より僕の患者たちの 瞳の美しさ

この偉大な自然の中で 病と向かい合えば  神様について ヒトについて考えるものですね

やはり僕たちの国は残念だけど 何か  大切な処で 道を間違えたようですね

去年のクリスマスは国境近くの村で過ごしました  

こんなところにもサンタクロースはやってきます 去年は僕でした

闇の中ではじける彼等の祈りと 激しいリズム

南十字星 満天の星 そして天の川

診療所に集まる人々は病気だけれど  少なくとも心は僕より健康なのですよ

僕はやはり来てよかったと思っています  辛くないと言えば嘘になるけど しあわせです

あなたや日本を捨てた訳ではなく  僕は「現在(いま)」を生きることに思い上がりたくないのです

空を切り裂いて落下する滝のように  僕はよどみない生命(いのち)を生きたい

キリマンジャロの白い雪 それを支える紺碧の空

僕は風に向かって立つ ライオンでありたい

くれぐれも皆さんに よろしく伝えて下さい

最後になりましたが あなたの幸福(しあわせ)を  心から遠くから いつも祈っています

おめでとう  さようなら

「風に立つライオン」 作詞、作曲:さだまさし

HanaAkari

タイトルとURLをコピーしました