このブログは私がバックパッカーとして、2000年11月~約半年の間に二度目のインド・ネパールの旅で訪れた仏教聖地を、四半世紀後の私が思い返してみたら、一体何が出てくるのだろうか?という好奇心から古い記憶を辿り、出てきたものを書いてみることを試みたものです。
【ブッダガヤ】釈迦が覚悟した成道の地|旅の玉手箱 仏教聖地編-2
【ブッダガヤ】
〈サールナート〉の日本寺〈日月山法輪寺〉で祭りに参加した後、しばらくしてSお上人と弟子のK坊さんが、〈ブッダガヤ〉へ赴くというので、数名の旅行者と一緒に同行させてもらいました。
高齢のSお上人には汽車での移動は酷なので、ゆったりできるワゴン車を借りての移動でした。
ラダック出身のお寺のスタッフKさんが運転を務めて、私らは便乗させてもらったのです。
ウッタル・プラデーシュ州〈サールナート〉から、東隣のビハール州〈ブッダガヤ〉までは直線距離にすると250km程ですが、高速道路もなく幹線道路も道幅は狭く地道のようなものでした。
乾季のインドの風景には渇きに疲れたような低草木が目立ち、切ない情景がどこまでも広がっているようでした。
町に近くなると人工物が見えてきて少し安心しました。
途中で野良牛が車など無視して、平気で道を横切ったりするのがインドらしい光景でした。
そうはいっても運転手はイライラするもので、のんびりして一向に塞いだ道を開けてくれない牛に対して、クラクションを鳴らして応戦していましたが。
何もない田舎道の利点は何処でも用を足すことができ、催してきたら車を止めてもらい、いつでも藪の陰で青空トイレが出来ることでした。
一日がかりで到着した〈ブッダガヤ〉では、〈日本山妙法寺〉の日本寺に宿泊させてもらいました。
ここは仏教聖地の中でも一番多くの人々が訪れる場所ですから、各仏教国の寺にも力が入っていたように感じました。
各国の仏僧をそれぞれの法衣姿で至る所で見掛けるのは、とても仏教聖地らしかったです。
一方で多くの外国人観光客が訪れる場所なので、観光客相手に商売をする現地のインド人には、すれている印象が強かったです。
マハーボーディー・テンプル(大菩提寺)の周囲を廻りながら、世界の僧侶たちがお祈りを繰り返しているのが、印象深い光景でした。
釈迦、悟りの聖地の象徴的建造物は、塔のように聳え立つ迫力ある〈マハーボーディー・テンプル〉=〈大菩提寺〉でした。
現在ではユネスコの世界遺産にも登録されています。
世界のお坊さんたちが〈大菩提寺〉を周回しながら、お経を唱え祈りを繰り返していたのは、信心深くない私でも心振るえるものがありました。
あの時は私もお坊さんの真似事をして、団扇太鼓を打ちながら「南無妙法蓮華経」を唱えて回りました。
旅の恥は搔き捨て、全力で団扇太鼓を叩き、精一杯の大声を張り上げるので、初めは少し躊躇しましたが後味爽快でした。
恥ずかしいとか、迷惑ではないだろうかと思っているのは自分だけで、誰も気にしていないようでした。
それぞれ祈りのやり方は違うしバラバラなのに、全体が祈りによって一体化しているようでした。
敷地内にある特別な菩提樹も、人々の関心を集めていました。
釈迦が悟りを開いた時に鎮座していたのが、その菩提樹の下です。
残念ながら当時のままではないそうですが、挿し木によって生を繋いでいるのもちょっとした奇跡かもしれません。
挿し木ということは、初代とDNAは変わらないクローン体ですから、当時と同じ木ともいえると思います。
〈スジャータ〉の乳粥の話から。
釈迦は〈ブッダガヤ〉で悟りを開く前に、近くの〈スジャーター村〉で6年間に渡り、厳しい苦行を行ったが悟りに至れなかったのでした。
どれだけ身を捨てて苦行に臨んでも、悟りを得ることは出来ないと理解した釈迦は苦行を止めました。
瘦せ細り、骨と皮だけの姿になり衰弱した釈迦を介抱したのが、村娘〈スジャータ〉でした。
彼女は弱った釈迦の体を労わって乳粥を作って食べさせました。
そうして回復した釈迦は、その後菩提樹の下で悟りを開くのでした。
〈ブッダ〉の中道の教えはこの経験から悟った感覚だったのではないでしょうか?
一国の王子に生まれ、若い頃は贅沢に何不自由なく暮らすが、それだけでは満たされないものがあり、出家して修行に明け暮れた釈迦だったからこそ、極端なところに答えが無いことを悟ったのではないかと思います。
そして、〈スジャータ〉が差し出してくれた、一杯の乳粥の中にある愛で覚醒したのではないのでしょうか?
私は菩提樹の下で天啓を受け悟りを得たというストーリー以外に、肉体的に極限状態にまで陥った釈迦が、そっと差し伸べられた愛によって悟ったというストーリーもありではないのかと思います。
割り切ったドライなイメージが仏教にはありますが、釈迦は人間味がある魅力的な人物だったからこそ、その悟りの言葉に多くの人々が耳を傾けたのではないでしょうか?
そんな風に想像します。
HanaAkari