すみれの花が一面に咲いた小さな無人島、紫色が色んな想像を掻き立てます。
とても短い物語ですが、素晴らしい物語に出会えたことに喜びを感じました。
後世の人々に伝える為に、戦争の事を題材にした作品はたくさんありますが、この物語は戦争による惨事を直接は記していないのに、胸を打たれる美しい話でした。
特攻隊で命を落とした兵隊さんへのせめてもの弔いの想いが感じられました。
子供たちが兵隊さんを労う気持ちで送った「すみれの花」と共に、戦闘機は片道切符の特攻に飛び立ちます。
戦争が終わった後、特攻に向かった地域の小さな無人島の一つに、いつしか「すみれの花」が一面に咲くようになったのだそうです。
悲惨な出来事は、二度と取り返しのつかないことですが、それでも花は咲くことが出来る、そんな希望も込められているのでしょうか?
兵隊さんの善良な心が「すみれの種」となって、後世に繋いだ光景なのでしょうか?
人間を完全に創造することが出来なかった、神の償いの顕れなのでしょうか?
すみれの花が一面に咲いた小さな無人島、紫色が色んな想像を掻き立てます。
短い物語なのに、色んな思いが溢れてくる素敵な作品でした。
今西祐行(いまにし すけゆき)氏〈1923年~2004年〉
大阪府出身の児童文学作家です。
広島に原爆が落とされた時には、現地に赴き救援活動を行ったことが印象深いです。
HanaAkari
リンク