癖の強い〈プリニウス〉の痛快な発言の数々、古代ローマ時代にタイムスリップしたかのような圧巻の描写、渾身の力作だと思います。
あまり馴染みのない〈プリニウス〉という、古代ローマ時代に実在した人物を主人公にした物語でした。
この漫画で初めて知った人物ですが、とても癖のある面白い発言の数々、周囲の人の意見などお構いなしに飽くなき探求心で冒険の旅を繰り返す博物学者は魅力的でした。
〈プリニウス〉はローマ貴族でもあり軍人でもあるのですが、探求の旅がライフワークだったみたいです。
この漫画の中では温泉好きでお茶目な一面も見せながら、頑固な性格を地で行く強者なのに喘息持ち。
そして真面目に毒のある言葉を吐きまくるのが愉快でした。
悪帝として名高いローマ皇帝〈ネロ〉も頻繁に登場するのですが、特徴的なキャラクターの一人として非常に際立っていました。
また〈プリニウス〉を取り巻く人物たちが〈プリニウス〉に負けじと、それぞれ個性的に目立っているのも楽しい一因だと思います。
またこの漫画は画力が凄く、古代ローマ時代の景色の中にタイムスリップしたかのように思えるくらいの描写で、目も十分に楽しませてくれます。
とにかく圧倒的な絵力に目を見開きながら、古代ローマ時代の風習や歴史も知ることができたのは、とても嬉しいことです。
火山の噴火で灰に埋もれた都市〈ポンペイ〉も、物語の重要な位置付けにあるようでした。
渾身の力作、ありがとうございました。
変人〈プリニウス〉の名言をピックアップ。
どの時代でも人間がたとえどんな高度な文明を築き上げても、自然の力に勝てたことはない。
生まれた赤ちゃんを見て…〈プリニウス〉が言う。
人間というのはこれだけ弱虫に生まれておきながら、やがて全ての生き物に対して主人面をするようになる。
裸でこんな無防備な姿で生まれてくるが、誇りだけは高い生物に育っていく。
精神の腐った生き物たちの世界…虚栄心、自己欺瞞、富と権力への欲望、それらがどれだけ多くの人々を破壊に導き、責め苦の中に落としめてきたというのだ。
懲りもせずにもう何世紀も何世紀も、同じ過ちを繰り返し続けているのはどうかしている。
人間というのは他人を教えつつ、自らも学ぶ仕組みになっておるからな。
生き物に優劣をつけるな。我々は同じ星に生きている同じ生き物に過ぎんのだから。
〈プリニウス〉の旅は全部で12巻で完結です。
漫画「プリニウス」は全12巻で完結です。
〈プリニウス〉の旅はローマから地中海の島、アフリカまで旅の舞台が広がり、ローマの大火、クレタ島のミノタウルス、伝説のアレキサンドリアの大灯台、大図書館など、歴史上の事件や建造物が出てくるのが見もので、伝説も織り交ぜられてまさに古代への旅を楽しめます。
一方、〈プリニウス〉とは馬が合わないローマ皇帝〈ネロ〉の猟奇的な動向の数々も注目で、ギリシャに出向いている場面もありました。
HanaAkari
