ドブ川を泳ぐヤセ犬も、マイペンライ(まあ、いいさ)に生きる…
変わったタイトルが気になりました。
蓋を開けてみれば、タイが舞台の犯罪捜査物語でしたが、汚職が横行する格差社会の中で、貧しい底辺の人々が逞しく生きる姿がテーマになっているようでした。
賄賂や裏切りが当たり前の社会では、上手に手を染めた者は富と名声を得るが、真面目に不器用に生きるものは安月給、さらに都合が悪くなれば虫けらのように扱われる社会。
そんなドブ川を泳ぎ切ろうとするノラ犬のような人物たちが、「水に犬」の正体でした。
また、一昔前の頃のタイがモチーフのようですが、私がタイに旅した時期と近かったので、漫画の中に描かれているバンコクやタイの風景が、実際に見たそのままだったのが、懐かしさもあり嬉しかったです。
リアルに描写されていて驚きました。
ただこの漫画の醍醐味はやはり、異国タイの匂いを感じつつ、ヘドロのような現実の中で命の危険と背中合わせでも、胸を張って生きる人々が見せる泥臭い逞しさだと思います。
綺麗事だけでは語れない、泥の中にある凛としたものが人間臭さと重なってくるのです。
主人公のタイ人の警察官の言葉にグッとくるものがありました。
「この国の警官として正義を通そうとすることは、この大きな泥の川を泳ぎ渡ろうとしているヤセ犬みたいなもんだ。途中で多少泥水飲んだって…マイペンライ(気にしない)」
「マイペンライ」…そういえばタイ人の口癖でした。
「マイペンライ」タイでよく耳にする多彩な意味を持つタイ語。
「水に犬」では登場人物たちがよく「マイペンライ」という言葉を使いますが、状況によって色んな意味になる言葉です。
物語を通してタイの風習や「マイペンライ」の使い方の違いを、教えてくれていたのが粋な計らいだと思いました。
主な意味は、「問題ない」や「気にしない」です。
「水に犬」の中ではそれ以外で「のんびりいこうぜ」「乾杯」「大丈夫」「まっ、いいか」「まあ、いいさ」などが、登場人物の口から発せられていました。
HanaAkari