斜に構えた主人公〈ダミッポス〉と〈アルキメデス〉が魅力的でした。
紀元前216年、「ローマ」と「カルタゴ」の戦争の世界を舞台にした創作歴史漫画でした。
世界史で教わった「カルタゴ」の英雄〈ハンニバル〉が、アルプス山脈を象に乗って越え、イタリア半島に覇を誇っていた「ローマ」に攻め込んでいく場面から物語は始まりますが、主人公は〈ハンニバル〉やローマの武将ではなく、〈ダミッポス〉という架空の青年でした。
どこか世間の空気に冷めたような〈ダミッポス〉青年の斜に構えた感じが、カリスマには無い魅力を醸し出していて、じわじわと面白さが伝わってきます。
〈ダミッポス〉はギリシャの〈スパルタ〉出身なのですが、風来坊の質らしく流れ流れてローマの支配下にあったシチリア島のシラクサ市でローマ人の彼女〈クラウディア〉と暮らしていましたが、カルタゴ兵がシラクサ市を占領したことから、きな臭い展開となっていきました。
シチリア島、シラクサ市を巡るカルタゴとローマの戦争の中で、〈ダミッポス〉は独特の処世術を発揮するのですが、いつもどこか冷めているのが愉快でした。
天才〈アルキメデス〉も登場し〈アルキメデス〉がこの時代の人であり、シチリア島、シラクサ市の人だったということを知りました。
この漫画は〈アルキメデス〉も第二の主人公といえそうです。
「あんたらはすげぇよ…でももっと…ほかにやる事ァないのかな」
この漫画は、〈アルキメデス〉の発明を戦争の道具にした様々なアイデアの面白さと残酷さに大きな見どころがあったように思うのですが、私の勝手な妄想では、作者〈岩明均〉氏はラストシーンでの〈ダミッポス〉のたった一言のセリフを描きたくて、この物語を組み立てたのではないのかなと思ったのです。
戦争を繰り広げるローマの将軍に対して、「あんたらはすげぇよ…でももっと…ほかにやる事ァないのかな」と言って、背を向けて立ち去る〈ダミッポス〉の姿が描きたかったのではないでしょうか?
「あんたらはすげぇよ…でももっと…ほかにやる事ァないのかな」
この一言が、この物語の根幹であり、〈ダミッポス〉の背中を切なくも強烈なものにしているのだと私は感じました。
HanaAkari