粋な本当の正義を見た感じがします。素敵な物語です。
天才金庫破りジミー・ヴァレンタインと、刑事ベン・プライスがとてもにくい行動を取るのが堪りません。
この二人のような粋な行動にこそ、現代社会が見失いがちな人間力があるように感じます。
法の目からするとそこには矛盾があるのですが、法の正義では解決できない正義を黙って伝えてくれたようです。
ジミー・ヴァレンタインは、恋に落ちたことで金庫破りの人生に幕を引きます。

彼は愛に目覚め生まれ変わって新しい人生を送るため、別人になって堅気の商売を始め成功します。
と同時に恋人とも結婚する運びになったのですが、ある事件が起こりジミー・ヴァレンタインは金庫破りを再びすることになるのです。
金庫内に閉じ込められた子供の命を救うために、多くの人々の前で葬り去ったはずの過去に戻って金庫破りを行います。
汚れた正体を晒してしまうことで失うものがあるけれども、躊躇せず自分の幸せを捨て、子供の命を救うジミー・ヴァレンタインの潔さから、凛としたその場の空気が伝わってきました。
その後、恋人に背を向け無言で立ち去るジミー・ヴァレンタイン。
彼の背中が、本当の正義を語っているようでした。
また金庫破りジミー・ヴァレンタインを追って、その場に居合わせていた刑事ベン・プライスが、観念したジミー・ヴァレンタインを人違いだと言って見逃すのが渋すぎます。
清々しい粋な行動の先にある未来は、きっと明るいものになるだろうと思えます。

オー・ヘンリー(O.Henry)〈1862年9月11日~1910年6月5日〉・・・アメリカの小説家
機知に富んだ短編小説で有名なアメリカの作家。
魅力的な短編小説が多くありますが、それは彼の特異な経験から生まれてきたのかもしれません。
〈オー・ヘンリー〉は、銀行のお金を横領した罪で刑務所に服役した時期があったようですが、汚れた過去の持ち主とレッテル貼るのはもったいない魅力的な小説家だと思います。
仮に汚れた過去があったとしても、その汚れから何かに気が付くことも多いと思います。
また、読み手は〈オー・ヘンリー〉の作品から、何か気が付くことがあるかもしれないのが摩訶不思議なのです。

HanaAkari