「銀河鉄道 の夜」一度は乗ってみたい夢の汽車の車窓からタイタニック号が見えました。 宮沢賢治著を読んで
何度読んでもしんみりとした心地の良い気持ちになります。
「銀河鉄道」は一度は乗ってみたい汽車なのは間違いありません。
夢でもいいので、あの汽車に乗って宮沢賢治氏の銀河を旅をしてみたいものです。

しかしながら宮沢賢治氏の世界が全開の描写部分を読んでいる時は、こちらの想像力が付いていけずに、どうしても読書をする速度が遅くなってしまいます。
銀河世界以外の現実世界のお話の部分はすんなりと読めるので、きっとそうなのだと思います。
こんなことでは幻想的な「銀河鉄道」に乗り遅れてしまいそうでちょっと焦ります。
またこの美しい物語は情景だけが美しいのではなく、心が美しいのだと思います。
ジョバンニと親友のカムパネルラが銀河鉄道に乗りながら、様々な美しいものに見聞を広げながら、汽車の中で出会う人々と交流しながら、二人の未来へと向かっているのだと感じました。
この汽車の旅は、「人のために何が幸いなのだろうか?」そんな心の声に従ったカムパネルラを向こう側に送り届けるためのたむけのようですし、「人のために何が幸いなのだろうか?」心優しく傷つきやすいジョバンニの、これからの未来へ向けてのはなむけでもあるようでした。

氷山に衝突して海に沈んだタイタニック号のことが、物語に組み込まれているのかもしれないと思いました。
「銀河鉄道の夜」には「タイタニック号沈没」のことをモチーフにしている箇所があることに気が付きました。
もしかしたら物語全般が「タイタニック号沈没事件」のことからの、想像の広がりなのかもしれないとも感じました。

「銀河鉄道」に「タイタニック号」に乗り合わせていたらしき姉弟が乗車してきます。
その方々との会話はまさに「タイタニック号」の話のようですし、ジョバンニにお父さんは船乗りですし、カムパネルラは川に落ちたクラスメイトのザネリを助けに川に飛び込みますし…
もしかしたら「タイタニック号の沈没事件」をモチーフにして、何が幸せで、何が幸いなのか?というテーマを幻想的に描いた作品なのだろうかと考えてしまいました。
(ああ、その大きな海はパシフィックというのではなかっただろうか。その氷山の流れる北のはての海で、小さな船に乗って、風や凍りつく潮水や、はげしい寒さとたたかって、たれかが一生けんめいはたらいている。ぼくはそのひとにほんとうにきのどくでそしてすまないような気がする。ぼくはそのひとのさいわいのためにいったいどうしたらいいのだろう) 〈ジョバンニの心の声〉
ふさぎこむジョバンニに対して燈台守がなぐさめます。
「なにがしあわせかわからないのです。ほんとうにどんなつらいことでもそれがただしいみちを進む中でのできごとなら、峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一あしずつですから」
「ああそうです。ただいちばんのさいわいに至るためにいろいろのかなしみもみんなおぼしめしです」
「タイタニック号」からやってきたらしき青年の言葉です。
またジョバンニに対してセロのような声が話す言葉は素敵でした。
「…みんながめいめいじぶんの神さまがほんとうの神さまだというだろう、けれどもお互いほかの神さまを信じる人たちのしたことでも涙がこぼれるだろう。それからぼくたちの心がいいとかわるいとか議論するだろう。そして勝負がつかないだろう。けれども、もしおまえがほんとうに勉強して実験でちゃんとほんとうの考えと、うその考えを分けてしまえば、その実験の方法さえきまれば、もう信仰も化学と同じようになる。…〈セロのような声は続きます〉… …あすこにプレシオスが見える。おまえはあのプレシオスの鎖を解かなければならない」
ジョバンニは決意を胸に星に向かって立ちました。
「ああ、マジェランの星雲だ。さあもうきっと僕は僕のために、僕のお母さんのために、カムパネルラのために、みんなのために、ほんとうのほんとうの幸福をさがすぞ」

セロのような声がジョバンニの胸に力強く話します。
「さあ、切符をしっかり持っておいで。お前はもう夢の鉄道の中でなしにほんとうの世界の火やはげしい波の中を大股にまっすぐに歩いて行かなければいけない。天の川のなかでたった一つの、ほんとうのその切符を決しておまえはなくしてはいけない」
本当に凄い物語だと思います。
以前に読んだことのある作品を、改めて楽しむという遊びを見つけました。
昔に読んだことのある作品を、時間が経過して価値観や人生観にも以前とは違いがある今、再度読み直してみることが私の一つの楽しみです。
大半のものは内容は忘れてしまっていて、タイトル名と作者だけが記憶に残っている場合がほとんどですので、以前とは違う自分が新しい作品を読むような感じになることが楽しくて、私の遊び心に火を灯してくれました。
久しぶりに読み直してみると、忘れていたはずの内容が思い出されたり、その作品を読むに至った経緯なども思い出され懐かしさも堪能できます。
まさに一石二鳥のささやかな趣味を見つけた気持ちです。
また今では、著作権が消滅した作品が「青空文庫」という電子図書で無料で読むことが出来るので、大変ありがたいことです。

「青空文庫」とは
インターネットの電子図書館が「青空文庫」です。
「本を電子化して、誰でも読めるようにしておくと面白い」という考えから始まった取り組みで、ボランティアの方々のお陰で成り立っています。
著作権が消滅した作品が集められますので古い作品が中心になりますが、古典の名作が無料で読めることは本当にありがたいことだと思います。
日本の名立たる文豪の作品が軒並み揃っていますし、どの時代になっても色褪せない機知に富んだ作品は、後世まで残していきたいものですので、読みたい時に誰でも読めるという発想と、その取り組みは素晴らしいの一言に尽きます。
様々なテキストで読むことができるようですが、私は愛用している電子書籍〈ブックライブ〉で無料で購入できるのでそちらで読んでいます。
実を申しますと〈ブックライブ〉で0円で購入できる書籍を発見したことから、「青空文庫」の存在を知りました。
〈ブックライブ〉も有料の同じ書籍を取り扱っているにも関わらず、「青空文庫」が読めるように取り計らってくれているのにも好感が持てます。
良い発見をしました。
HanaAkari