「オツベルと象」 宮沢賢治著 を読んで

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オツベル と象 〈宮沢賢治〉作品を読んで
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予想とはまるっきり違った物語で、人間の嫌な部分に対して宮沢賢治流の表現が際立っている作品でした。

オツベルという名前の響きから、良い人間だと思い込んでいたら大間違いでした。

オツベルは悪知恵の働く悪徳商売人だったのです。

記憶の扉の向こうで勝手に物語を作り替えて、懐かしい思い出として眠っていたものを掘り起こしてみたら、とんでもないものが出てきたものだと思いました。

健気な白象を口車に乗せてこき使うオツベルの姿は、まるで時代劇でよく見た悪代官と悪徳商人のようで、「お主も悪よのう」という言葉が聞こえてくるようでした。

「いやいや、とんでもございません、お代官様。これもすべてお代官様のおかげです。どうかこの菓子折りをお納め下さい」てな具合に、小判が入った饅頭箱を横目で確認した後に、いやらしい笑みがこぼれ落ちる情景が目に浮かびました。

悪代官

オツベルは口八丁で白象をだまくらかして、私腹を肥やす欲望に貪欲な、黄金色(こがねいろ)に憑りつかれた金の亡者だったのです。

なんとなく哀れなゾウを救い出したオツベルが、象と一緒に仲良く暮らす物語かと思っていた私には、衝撃の事実でした。

宮沢賢治氏の世界観は面白くて素敵ですし、独特の表現が堪らなく魅力的です。

白象は聖母マリアを敬愛する心の優しい象でしたが、オツベルに上手く騙されてこき使われるにつれて、痩せ衰えてゆきます。

仕事をさせられた後に白象がこぼす言葉に変化が出てくるのですが、それが哀愁を孕んでいてとても切ないものでした。

「ああ、せいせいした。サンタマリア」
「ああ、つかれたな、うれしいな、サンタマリア」
「苦しいです。サンタマリア」
「もう、さようなら、サンタマリア」
奴隷象

そんな白象を見かねたお月様が助け舟を出しました。

もしかしたらサンタマリア様なのかもしれませんが、仲間に手紙を書いて助けを求めるように助言したうえに、使いも寄越してくれました。

白象からの手紙を読んだ象の仲間たちは、オツベルに奴隷のようにされている白象を助けに駆け付けて、あっさりとオツベルを踏みつぶしてしまうのですが、人(象)の善意につけ込んで私腹を肥やすだけだったオツベルのあっけない最後は、「あらま」とさらりと読み流してしまいました。

それよりも象の雄叫びが気になって仕方がありませんでした。

グララアガア、グララアガア、グララアガア。

グワア、グワア、グワア。

オツベルは蚤のようにあっさりの踏みつぶされてしまうのも頷けます。

白象も元気な時は簡単にそうすることが出来たはずですが、善良な性質だったためオツベルにズルく利用され奴隷にされてしまったことで、弱ってしまったのでした。

善良な心につけ込んで悪用する行為は、悪行の二段重ねのように思えました。

グララアガアという咆哮を聞くことの無いように、生きていこうと思います。

白象

以前に読んだことのある作品を、改めて楽しむという遊びを見つけました。

昔に読んだことのある作品を、時間が経過して価値観や人生観にも以前とは違いがある今、再度読み直してみることが私の一つの楽しみです。

大半のものは内容は忘れてしまっていて、タイトル名と作者だけが記憶に残っている場合がほとんどですので、以前とは違う自分が新しい作品を読むような感じになることが楽しくて、私の遊び心に火を灯してくれました。

久しぶりに読み直してみると、忘れていたはずの内容が思い出されたり、その作品を読むに至った経緯なども思い出され懐かしさも堪能できます。

まさに一石二鳥のささやかな趣味を見つけた気持ちです。

また今では、著作権が消滅した作品が「青空文庫」という電子図書で無料で読むことが出来るので、大変ありがたいことです。

宮沢賢治
宮沢賢治

「青空文庫」とは

インターネットの電子図書館が「青空文庫」です。

「本を電子化して、誰でも読めるようにしておくと面白い」という考えから始まった取り組みで、ボランティアの方々のお陰で成り立っています。

著作権が消滅した作品が集められますので古い作品が中心になりますが、古典の名作が無料で読めることは本当にありがたいことだと思います。

日本の名立たる文豪の作品が軒並み揃っていますし、どの時代になっても色褪せない機知に富んだ作品は、後世まで残していきたいものですので、読みたい時に誰でも読めるという発想と、その取り組みは素晴らしいの一言に尽きます。

様々なテキストで読むことができるようですが、私は愛用している電子書籍〈ブックライブ〉で無料で購入できるのでそちらで読んでいます。

実を申しますと〈ブックライブ〉で0円で購入できる書籍を発見したことから、「青空文庫」の存在を知りました。

〈ブックライブ〉も有料の同じ書籍を取り扱っているにも関わらず、「青空文庫」が読めるように取り計らってくれているのにも好感が持てます。

良い発見をしました。

HanaAkari

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