このブログは私が想像で世界旅行に行ってみる、空想旅行記です。行ってみたい国や場所は尽きませんが、実際に全ての場所に行くことは現実的でなく、様々な事情で行けない場所もあります。そんな一切の事情を無視して、空想で世界各地に飛び出してみたくなりました。
【桃源郷|中国?】平和な仙郷の甘露の桃と蜂蜜|空想@世界一人旅
昨今の血生臭い状況に息苦しくなってしまったので、空想旅行社に「心の充電で良い旅行先はないでしょうか?」と尋ねてみると、「桃源郷」をお薦めされたので行ってみることにしました。
「桃源郷(とうげんきょう)」まず響きからして心酔してしまいようなところが、たまりません。
「仙境」とも呼ばれることもありますので、山間の人里離れた仙人たちの里なのでしょう。
一瞬良い香りがしたかと思うと、私の目の前には桃色に彩られた長閑な光景が広がっていました。
満開の桃の花からは甘く良い香りが絶えず漂っていて、心地良い風が私の頬を撫でて行く。
小鳥のさえずり、小川のせせらぎ、微笑みに溢れた人々の顔。
あちらの満開の桃の木の下では、囲碁を楽しむ二人の老仙人。
こちらの桃の木の下では童たちが、「明かりをつけましょ、ぼんぼりに~、お花をあげましょ、桃の花~」桃の節句の歌を愉快そうに合唱しています。
少し先の広場からは、お花見を楽しむ人々の笑い声が聞こえてきます。
お酒がありそうなので、行ってみることにしました。
「こんにちわ」
「こんにちわ、よかったらどうぞ」そういって女仙人の一人が私に盃を差し出してくれました。
「ありごとうございます」
初めて飲む味のお酒でした。
桃の甘い香りがほのかに香り、すっきりとした日本酒のようでもあるのですが、あんまりにもすっきりとした飲み心地に、喉ごしだけでなく、頭の先から足の先まで爽やかな気が駆け抜けました。
爽やか~、健やか~、ありがとう~、が全身にこだまします。
「あら、あなた、桃が食べたいとお思いのようですね」別の女仙人の方が私に尋ねました。
私は驚いてしまったのですが、実は桃が大好物の私ですが、今は桃の花の季節にいるのだから、桃の実を今は食べることが出来ないのは残念だと心の中で思っていたのです。
「はい、私は桃が大好きですから…次は収穫の季節にまた寄せてもらいます」
「ほっ、ほっ」女仙人は小さく笑うと、私に手を出すように言いました。
すると私の手の平の上に、ふっくらとよく熟れた桃が一つ現れたのです。
「そうぞ、召し上がって下さい」そう言われたものの、私は驚きで直ぐには桃を口にすることが出来ないでいました。
「心配はいりませんよ、ここではいつでも欲しい物が欲しい時にあるのが、普通のことなのですよ」女仙人は微笑みを絶やさずに、自然にそうおっしゃったものですから、私は桃にかじりつきました。
いつもならザラザラした桃の実の皮が邪魔なのですが、不思議とその桃はかじった瞬間から桃の実だけが口の中に入っていきて、皮の感触はありませんでした。
お味の方は聞くだけ野暮でしょう、甘露の桃でした。
お酒に酔ったのか?心地良い桃の気に酔ったのか?はたまた仙人の郷の気に酔ったのか?眠気が私を眠りに誘ってきました。
そうして満開の桃の木の下で眠ってしまうと、その時は宇宙のことが分かったような気がして楽しかったのですが、起きるとすっかり忘れてしまっていました。
「桃源郷」以外にも色んな「郷」があるみたいです。
一人の仙人の方に、うちでお茶でもどうですか?とお誘いを受けたので、遠慮せずに寄せてもらうことにしました。
その方の家の近くには小川が流れていて水車もあり、こんなに素晴らしい所に住んでみたいと素直に思いました。
その方の話では、ここは「桃の郷」ですが仙人の郷には、「りんごの郷」「さくらんぼの郷」「梅の郷」「桜の郷」「藤の郷」「金木犀の郷」それはもうありとあらゆる草木、お花の里があるのだそうです。
それぞれの季節になれば、それぞれの郷に出かけて行き季節を楽しむそうです。
それぞれ美しいだけでなく、「梅の郷」では香しい香りに爽やかな気持ちになりましょう。
匂いでは「藤の郷」のいい香りは負けていはいないでしょう、ころころした熊蜂が飛び回って可愛いこと。
どれもこれも美しく、香しくて素晴らしいのです。
それぞれの花の季節には養蜂家が花と共に、ジプシーのようにやってくるそうです。
仙人たちは少しお裾分けを頂くそうですが、「りんごの花の蜂蜜」はすっきりとした味と香りが人気なのだとか…
ほんとかな~、どれも甲乙つけがたいように思うのですが…
本当は仙人たちにとっては全て「甘露の蜜」で恵みに感謝されるだけなのでしょうが、娑婆から来た私の為に少しリップサービスをしてくれたのだと思います。
HanaAkari