「トルストイ民話集 イワンのばか 他八篇」 レフ・二コラエヴィチ・トルストイ著 を読んで

※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています。
トルストイ 民話集を読んで 〈外国人〉作品を読んで
スポンサーリンク
スポンサーリンク

誤魔化しなしに一刀両断!皮肉も含んだ、人間への全力の愛が灯す世界観

レフ・トルストイは1828年から1910年を生きた、ロシアを代表する文豪です。

キリスト教の考え方を基礎にしながらも、政治と癒着したロシア正教会の歪んだキリスト教を批判して、弾圧されるような激しい一面のある戦士のような作家で、若い頃に軍人として戦争にも参加した経験が、後のトルストイの人生観に大きく影響され、精神的な悲しみや苦しみの体験から、人類に対する愛が芽吹いたような人のように感じました。

本当の正しさとは?生き方とは?幸せとは?といったテーマを追求していこうとする生き様は、今でも「精神性の灯台」として何かしらの指針を示してくれるかもしれません。

トルストイ
トルストイ

イワンのばか

人間の欲望が大きくなり過ぎて、はまってしまう落とし穴に対しての回避策として、明快な極論を分かりやすい物語にしているようでした。

馬鹿正直なイワンが、ただ愚直に生きているだけで、人間の欲望を利用して人を貶めようとする悪魔も退散してしまうことになるお話です。

欲の皮が突っ張っることへの戒めのようですが、面白いところは頭のいい兄と、力のある兄はまんまと悪魔の罠にはまってしまい、身を滅ぼしてしまうのですが、ばかなイワンと口のきけない妹の愚直な生き方に触れて、逆に悪魔が身を滅ぼしてしまうのです。

純粋で愚直な、ばかのイワンが知らない間に勝利し、幸運を手にする辺りは、胸がスカッとするようですし、皮肉に富んだ部分だと思いました。

最後には国王になったイワンですが、イワンの国の習慣は、「働いて手にタコがある者は食べる資格があるけれども、手にタコのない者は、人の残り物を食べないといけない」ということです。

ずる賢く頭を使って働くことを入れ知恵した悪魔は、頭を打って死んでしまうところなんかは、意味深いです。

トルストイ

人にはどれほどの土地がいるか

私はこの「人にはどれほどの土地がいるか」という作品はとても素晴らしいと思うのと、極論の表現ですがとても気に入った内容でした。

領土問題が絶えない昨今ですが、それに対して究極の答えを示しているように思いました。

恐ろしく単純で、皮肉たっぷりのストーリー展開に、身に染みる所もありますが、痛快でもありました。

欲の皮が突っ張り過ぎて死んでしまう男の話です。

陽の上り始めから日没までの間に、自分の足で歩いて線で結んだ場所を、全て自分の土地にすることができるという条件の元、男は欲望の誘惑のままに出来るだけ広い土地を確保しようと、朝から晩まで歩き回って、ゴールした時には、無理がたたって死んでしまうのです。

その場所に男の墓穴が掘られて埋葬されるのですが、結局最後は一人の人間に必要な土地は、墓穴一つ分だけだという内容からは強烈な印象を受けました。

よくどれだけお金を持っていても、死後の世界には持っていけないなどと言ったりしますが、「所有とは?」といったことを根本から考えてみたらどうですか?というトルストイからのメッセージのようで、痛い所を突いてくるなぁと、ロシアの文豪の鋭さに辟易してしまいます。

HanaAkari

タイトルとURLをコピーしました