「火垂るの墓」は、同時上映された「となりのトトロ」以上に衝撃を受けたアニメ映画でした。
14歳の少年、清太が死ぬところから物語は始まります。
「火垂るの墓」との出会いは、私が子供だった頃、ジブリ映画「となりのトトロ」と同時上映されたアニメ映画「火垂るの墓」ででしたが、実は「となりのトトロ」を見るのが目的で、「火垂るの墓」はついでに見ることになったのでした。
なぜ、このような暗い話をわざわざアニメにするのかと、怪訝な気持ちだったのですが、一見して心を鷲掴みにされたのも懐かしい思い出です。
私は「となりのトトロ」よりも「火垂るの墓」に魅了され、当時今では存在しないレーザーディスクを買って、事あるごとに何度も見たものです。
戦争の話題を耳にすることが多くなったこともあり、ふと小説を読み直してみたいと思いました。
子供時分にも読んだ記憶はありますが、今こうして改めて読んでみると、まったく違う小説のように感じ、どういったものなのか自分でもよく分からないのですが、感謝の気持ちが溢れてきて、しばらく茫然としてしまいました。
「蛍」を「火垂る」と表現しているのにも訳があったみたいです。
以前は、幻想的な闇夜に蛍が飛び交う光景に見惚れるようなことしか感じなかったのが、この物語には「火垂る」が、大事な場面には必ず舞っているのだと感じました。
悲しみが「火垂る」の淡い光に反映されているようで、命の残火が儚く舞って消えゆくようでした。
良き思い出も「火垂る」ですし、魂の導き手も「火垂る」でした。
多くの戦争での犠牲者の魂も「火垂る」なのでしょう。
特攻隊も「火垂る」でした。
4歳の妹の節子が時々口にする会話に、胸が詰まることが多くありました。
無造作に転がっている死体を見た節子は「あれどないしたん、寝てはるわ」と何も分からずに思ったことを口に出したり…
食べるものが無く衰弱した節子が、ままごとをする場面では、一体どうしたらいいのかという、いたたまれない気持ちにしかなりませんでした。
「お兄ちゃん、どうぞ」「御飯や、お茶もほしい?」「それからおからたいたんもあげましょうね」
土くれや石が並べられ、「どうぞ、お上がり、食べへんのん?」
野坂昭如(のさか あきゆき)氏の記憶
私が子供の頃には、(故)野坂昭如氏を、テレビのコメンテイターとしてよく見かけました。
率直な印象はガラが悪く、毒舌、灰汁の強い印象でした。
「火垂るの墓」にある、戦禍での誤魔化しのない描写には、その人柄はよく表れているようですが、「蛍」を儚い命と結び付けて描写する感性とは、正直ギャップを感じます。
ですから魅力的で面白いのだと思います。
そういえば、映画監督(故)大島渚氏との喧嘩と因縁も、可笑しかったです。
野坂昭如氏も大島渚氏も、どちらも個性の塊のような人物だったので、二人の喧嘩が無茶苦茶面白かったのを覚えています。
HanaAkari