「芋粥」 芥川龍之介著 を読んで

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読書感想文〈芋粥〉 〈芥川龍之介〉作品を読んで
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ささやかな喜びの中に幸福が…。地味なのにしんみりしました。

五位という、うだつが上がらない侍の物語なのですが、初めのうちは何もそこまで五位を扱き下ろさなくてもいいものを…と若干やり過ぎではないですか?と思ったのでした。

五位という名前にも一癖あるのでしょう。

一位から三位までに入らず、四位でもない五位のところが、風采の冴えない凡夫の名前として絶妙に当てはまるように仕組まれているのだと思いました。

芥川龍之介氏の作品には皮肉なところが多いように見受けられ、またそれが魅力なのですが、この「芋粥」の描写には戸惑いも感じたのが率直な気持ちです。

しかし、ずるいのはそれすらも巧妙に仕組んでいたのだろうと最後まで読むと思えるのです。

五位は滅多に口にすることの出来ない芋粥が大好物で、芋粥を飽きる程お腹いっぱい食べてみたいという、ささやかな夢を唯一大切に生きていました。

嫌味な展開で五位にその機会が訪れます。

嫌な思いと不安を抱えながら五位は芋粥を飽きる程食べることになるのですが、いざささやかな夢が現実となり、好きなだけ芋粥を食べてみれば、お腹は限界まで張り、喉も通らない程にまでなった時には喜びは苦しみに変わってしまうものです。

いざ芋粥を思う存分食べたいという欲望を果たしてしまった五位が、その夢をただ一人で大事に守ってささやかに生きていた時が幸福だったのだと、自分を思い返すのが印象深いところでした。

しみったれているようですが、共感できます。

何だか冒頭から五位に対して当りが強いと感じていたことがこの最後で、それが他の人にとってはちっぽけな喜びでも、とても大切なものだったという五位の心と対比させるものだったのかと思いました。

そして私もムズムズしていたものが、すっかりと報われたのです。

ちなみにこの物語の芋は、里芋やサツマイモではなく、山の芋や長芋のようでした。

そういった芋粥は食べたことがありませんが、滋養がありそうですね。

子供の頃熱を出して寝込んだ時に、サツマイモの芋粥を食べさせてもらった記憶がありますが、甘くて塩味が効いていて美味しかったです。

でも五位のように特別な時にだけ食べることが出来たから良かったのでしょう、飽きる程食べてみると嫌いになりそうです。

粥

以前に読んだことのある作品を、改めて楽しむという遊びを見つけました。

昔に読んだことのある作品を、時間が経過して価値観や人生観にも以前とは違いがある今、再度読み直してみることが私の一つの楽しみです。

大半のものは内容は忘れてしまっていて、タイトル名と作者だけが記憶に残っている場合がほとんどですので、以前とは違う自分が新しい作品を読むような感じになることが楽しくて、私の遊び心に火を灯してくれました。

久しぶりに読み直してみると、忘れていたはずの内容が思い出されたり、その作品を読むに至った経緯なども思い出され懐かしさも堪能できます。

まさに一石二鳥のささやかな趣味を見つけた気持ちです。

また今では、著作権が消滅した作品が「青空文庫」という電子図書で無料で読むことが出来るので、大変ありがたいことです。

芥川龍之介
芥川龍之介

「青空文庫」とは

インターネットの電子図書館が「青空文庫」です。

「本を電子化して、誰でも読めるようにしておくと面白い」という考えから始まった取り組みで、ボランティアの方々のお陰で成り立っています。

著作権が消滅した作品が集められますので古い作品が中心になりますが、古典の名作が無料で読めることは本当にありがたいことだと思います。

日本の名立たる文豪の作品が軒並み揃っていますし、どの時代になっても色褪せない機知に富んだ作品は、後世まで残していきたいものですので、読みたい時に誰でも読めるという発想と、その取り組みは素晴らしいの一言に尽きます。

様々なテキストで読むことができるようですが、私は愛用している電子書籍〈ブックライブ〉で無料で購入できるのでそちらで読んでいます。

実を申しますと〈ブックライブ〉で0円で購入できる書籍を発見したことから、「青空文庫」の存在を知りました。

〈ブックライブ〉も有料の同じ書籍を取り扱っているにも関わらず、「青空文庫」が読めるように取り計らってくれているのにも好感が持てます。

良い発見をしました。

HanaAkari

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