「どっどど どどうど どどうど どどう」冒頭からいきなり宮沢賢治氏の世界が展開します。
宮沢賢治氏の作品の魅力は、唯一無二の世界観に尽きると思います。
あの世界の中に一度でも入ってみることが出来たら、きっと別人のように生まれ変われるのではないでしょうか。
どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹き飛ばせ すっぱいかりんも吹き飛ばせ どっどど どどうど どどうど どどう
冒頭からこんな調子なのですから、まったく驚かされます。
何か分かるような感じもする表現ですが、言われてみれば分かるけれども、自分では辿り着けない描写なのが、宮沢賢治氏の世界なのでしょう。
大好きです。
独特な世界観の中に人の心の美しさ、自然に対する畏敬の念、この「風の又三郎」においては童心など、人が大切にして生きなければならない心があるのが素敵だと思います。
子供たちの微笑ましい姿と不思議な要素とが混ざり合ったお話でしたが、天真爛漫な子供たちの姿には、ふと笑顔がこぼれてしまいました。
その人はあわてたのをごまかすように、わざとゆっくりと川をわたって、それからアルプスの探検みたいな姿勢をとりながら、青い粘土と赤砂利の崖をななめにのぼって、崖の上のたばこ畑にはいってしまいました。
「アルプスの探検みたいな姿勢」
思わず吹き出してしまいました。
こんな表現よく思い付くものだという感心も、後からやってきました。
作品全体が素敵なのは間違いありませんが、私はこの「アルプスの探検みたいな姿勢」という表現に出会えただけで、この作品を読んだ甲斐がありました。
以前に読んだことのある作品を、改めて楽しむという遊びを見つけました。
昔に読んだことのある作品を、時間が経過して価値観や人生観にも以前とは違いがある今、再度読み直してみることが私の一つの楽しみです。
大半のものは内容は忘れてしまっていて、タイトル名と作者だけが記憶に残っている場合がほとんどですので、以前とは違う自分が新しい作品を読むような感じになることが楽しくて、私の遊び心に火を灯してくれました。
久しぶりに読み直してみると、忘れていたはずの内容が思い出されたり、その作品を読むに至った経緯なども思い出され懐かしさも堪能できます。
まさに一石二鳥のささやかな趣味を見つけた気持ちです。
また今では、著作権が消滅した作品が「青空文庫」という電子図書で無料で読むことが出来るので、大変ありがたいことです。
「青空文庫」とは
インターネットの電子図書館が「青空文庫」です。
「本を電子化して、誰でも読めるようにしておくと面白い」という考えから始まった取り組みで、ボランティアの方々のお陰で成り立っています。
著作権が消滅した作品が集められますので古い作品が中心になりますが、古典の名作が無料で読めることは本当にありがたいことだと思います。
日本の名立たる文豪の作品が軒並み揃っていますし、どの時代になっても色褪せない機知に富んだ作品は、後世まで残していきたいものですので、読みたい時に誰でも読めるという発想と、その取り組みは素晴らしいの一言に尽きます。
様々なテキストで読むことができるようですが、私は愛用している電子書籍〈ブックライブ〉で無料で購入できるのでそちらで読んでいます。
実を申しますと〈ブックライブ〉で0円で購入できる書籍を発見したことから、「青空文庫」の存在を知りました。
〈ブックライブ〉も有料の同じ書籍を取り扱っているにも関わらず、「青空文庫」が読めるように取り計らってくれているのにも好感が持てます。
良い発見をしました。
HanaAkari