このブログは私がバックパッカーとして、1997年9月20日出国~1999年11月16日に帰国するまでの間に訪れた場所を、四半世紀後の私が思い返してみたら、一体何が出てくるのだろうか?という好奇心から古い記憶を辿り、出てきたものを書いてみることを試みたものです。
【ティクセ・ゴンパ】要塞のような僧院|旅の玉手箱 インド・ラダック編-3
【ティクセ・ゴンパ】
ラダックでは僧院、寺院のことを「ゴンパ」と呼ばれています。
小高くなった場所に要塞のように建てられているようなゴンパがあり、もしかしたら昔は要塞や見張り場所といった防衛の役割もあったのかなぁ~、もしそうだとすると物騒だなぁ~と思う反面、合理的だと感じるのと、建造物としての見た目の芸術性や迫力から感じる人間の技には驚嘆します。
ゴンパの中でも「ティクセゴンパ」の迫力は圧巻でした。
マナリーからバスに乗って来た際に、横目に見た時から気になって仕方がありませんでした。
日を改めて観光に訪れてみました。
僧院と言っても、まず見た目の格好の良さに惹かれてしまいます。
小高い場所に何層にも重なり合って聳え立つ形態に、私は寺院の厳かな雰囲気ではなく、秘密基地のようなアジト的なイメージがして、心が躍りました。
旅行者でも内部を気軽に観光させてもらえたので、建物内を見学させてもらいましたが、えんじ色の僧服を着た僧侶が、老僧から小僧まで多くいました。
老僧や一人前になった僧の方は個室を与えられているようでした。
個室といっても物は殆んどありませんでしたから、慎ましやかな生活なのは間違いなさそうでした。
印象に残っていることは老僧の方のメガネが斜めにぶら下がるように掛かっていて、何かそれが浮世離れした印象を強く感じさせ、物静かな佇まいと相まって、とても魔術的に見えました。
一体そのメガネを通して何が見えて、何を思い、そこにいらっしゃるのだろうか?とズケズケと土足で入り込んできた旅行者が、勝手な想像をして大きなお世話だったと思います。
青年の僧侶の部屋の窓辺に、鉢植えにされた一本の細ネギが置かれていた記憶がいまだに残っています。
薬味ネギなんてここにあるのかな?という疑問と、観葉植物のように育てているのかな?という疑問、何よりあのビジュアルから受けた、健気で切なくもそれが可愛くて、ささやかな一つの希望のようで、何とも言えない感情になったのでした。
お堂には金色に輝くカラフルな弥勒菩薩がおりました。
一階と二階が吹き受けになったお堂に巨大な大仏がおりました。
弥勒菩薩像とのことですが、チベット仏教風の色取りの多彩さ、模様の美しさは素晴らしい芸術だと思います。
お顔は二階から拝見することが出来るようになっていましたが、今でも覚えているのは額にあった巻貝の第三の目です。
第三の目からぐるぐる救済の光が溢れ出しているのか?ぐるぐる中に吸い込まれていくのか?私は渦巻をイメージがしたのと、何より洒落たデザインが好きでした。
一階では小僧が床を雑巾で拭き掃除していましたが、これが可笑しくて可愛らしかったです。
雑巾掛けを足でしていたのです。
日本のお寺でそんなことをやろうもんなら、折檻ものだぞと想像すると面白くなり、小僧が四つん這いで一生懸命床を雑巾掛けする日本の小僧の姿を思い浮かべて、目の前のチベットの小僧と比べて楽しんでしまいました。
あの時は夏でしたが、冬は極寒の地ですから理に適ったやり方なんだろうと思い、やる気のない感じも小僧だけに仕方なしか、雑巾掛けしているだけでも偉いもんだなんて偉そうに考えたものでした。
不思議だったのは、この弥勒菩薩像は初めて見たのではなかったことです。
巨大弥勒菩薩像は初見では無かったのが少し不思議でした。
実はインドに来て初めてデリーの映画館で見た、インド映画のシーンで出てきたのです。
「Dil se…(心から…)」という映画でしたが、インド映画の明るいイメージとは全く違った悲しいストーリーで、非常に芸術的な映像と音楽に感動した映画でした。
その映画はインド各地でロケをしているようで、ラダック地方での撮影シーンもありました。
その時の一部にこの巨大弥勒菩薩の映像を見ていたので、「これはあの映画で見た仏像だ…」という不思議な一致でした。
ラダック地方をロケ地にしたシーンは、邦題「きっと、うまくいく」というインド映画の最後の場面でもありました。
ブラットピット主演の洋画「ベンジャミン・バトン数奇な人生」でも、後半にあるインド旅行の回顧シーンで見かけました。
ちなみにこの映画に登場するインドの風景シーンは、私がインド旅行をした頃のインドの景色そのものです。
HanaAkari