遺稿という形で陰の部分を正直にさらけ出した、懺悔のように感じました。
文豪らしく遺稿という形で自分の一生を掘り起こしてみたのかな?と推測します。
自分の中に印象に残っている人生の断片を正直に文字に落としていったのだと思いました。
不思議なことに印象に残っている事柄はとても些細なことが多く、他人にはどうってことのない出来事でも、当人にはもの凄く鮮明に記憶に残っていることはあるものです。
皮肉屋の傾向がある芥川龍之介氏は、題にもあるように自分のことを「阿保」だと蔑み、あえて影のあるような部分や、悪の匂いがするような要素を集約させたのかもしれないと感じたのです。
暗い話、陰湿な心模様、冷めた胸の内をさらけ出すことで、懺悔を行っていたのかもしれないとも感じました。
「ある阿呆」にも時には明るい事もあったと思うのですが、根底にある陰の強い自分を素直に出すことで、もしかしたらそんな自分を肯定したかったのかな?
彼は何か鼠の子に近い赤子の匂いを感じながら、しみじみ思わずにはいられなかった。・・・「何の為にこいつも生まれて来たのだろう?この娑婆苦に充ち満ちた世界へ。・・・何の為にまたこいつも俺のようなものを父にする運命を荷ったのだろう?」
「誰もかれも死んでしまえばよい。」彼は焼け跡に佇んだまま、しみじみと思わずにはいられなかった。
彼は黙って目を反らした。が、彼の心の底にはこういう彼女を絞め殺したい、残虐な欲望さへない訳ではなかった…。
暗いですね…
生まれてきた意味を考え出すと、結局分からないで堂々巡りして辛くなりますし、何か分かったように思って、嬉しくなって行動すると予想に反してこれまでにない闇を経験することになったり…碌な事になりません。
考え過ぎずに目の前のことに一生懸命に取り組んでいけると幸いなのですが、一度頭が考えを巡らせ始めると、とりとめが無く余計なことを考えてしまって…なかなか本当の「阿呆」にはなれないから困ります。
「阿保」は関西では、褒め言葉でもありますから。
無料の電子図書館「青空文庫」について
インターネットの電子図書館が「青空文庫」です。
「本を電子化して、誰でも読めるようにしておくと面白い」という考えから始まった取り組みで、ボランティアの方々のお陰で成り立っています。
著作権が消滅した作品が集められますので古い作品が中心になりますが、古典の名作が無料で読めることは本当にありがたいことだと思います。
日本の名立たる文豪の作品が軒並み揃っていますし、どの時代になっても色褪せない機知に富んだ作品は、後世まで残していきたいものですので、読みたい時に誰でも読めるという発想と、その取り組みは素晴らしいの一言に尽きます。
様々なテキストで読むことができるようですが、私は愛用している電子書籍〈ブックライブ〉で無料で購入できるのでそちらで読んでいます。
実を申しますと〈ブックライブ〉で0円で購入できる書籍を発見したことから、「青空文庫」の存在を知りました。
〈ブックライブ〉も有料の同じ書籍を取り扱っているにも関わらず、「青空文庫」が読めるように取り計らってくれているのにも好感が持てます。
良い発見をしました。
HanaAkari