希望の葉に込められた思いが、小さな心の灯になりました。
私にとってこの作品は懐かしさもありながら、自分自身の過去のある時期を思い出してしまうものでした。
今から考えると心がなげやりな方向へと大きく寄っていた時期だったのだと思います。
「最後の一葉」の話のように愛と希望の光のプレゼントには目もくれない、斜に構えていた汚点とも言える青春時代でしたが、今ではそれも愛おしく感じます。
そんな頃もあったなぁ~、あの頃は自分のことが嫌いだったなぁ~、と思い起こされました。
ちょうど、物語の中でジョンジーが肺炎を患い、身も心も衰弱して行く中で、生きることを諦めてしまった状態に近かったのかもしれません。
ジョンジーは芸術家が夢を追いかけて集まる家賃が安い区域に、友人のスーと共に暮らしながら夢を追いかける絵描きです。
流感が彼女を襲い、肺炎に苦しむジョンジーは生きることを諦めてしまいました。
寝床から窓の向こうに見える建物に這ったツタの葉を見ながら、自分の命が刻々と残り少なくなってきていると、ぼんやりとした頭で考えるのです。
それは妄想かもしれませんが、気力、体力ともに限界に近いジョンジーにとっては、幻も現実なことなのかもしれません。
「私はあのツタの葉が全て落ちてしまった時に、死んでしまうのだわ」彼女はそう考えます。
冬の時期を前にツタの葉は残り少なく、木枯らしによってツタの葉は無惨にも、一枚一枚落ちてゆきます。
弱り切った時には、物事を前向きに考えることが難しいものですから、ジョンジーの気持ちは分かるような気がします。
医者は何か「希望」となることが必要だと、当たり前のことをアドバイスするのですが、確かに「希望」が薬になるのもその通りなのですが、極度に疲弊し心を閉ざしてしまったジョンジーには、周囲の人がどれだけ心配して、どんなに優しい言葉を掛けても、もう聞くことができないのが分かるだけに、心苦しくなるのです。
「希望」を持つことすら忘れてしまっているようなものでしょうから。
そんな折、無情にも嵐の一夜がやってきます。
ジョンジーはいよいよ最後の葉が落ちてしまう時が来たと悲しみに暮れながら、嵐が去って夜が明けた次の日に、覚悟を決めて窓の向こうに目を向けました。
その時に彼女には一縷の望みすら無かったかもしれません。
しかしそこには希望の星となる、一枚の葉が残っていたのです。
絶望の淵にいたジョンジーには予想だにしなかった、期待など微塵もなかったはずの奇跡が目の前にあり、意図せずに自然に喜びが湧きあがったことだと思います。
たった一枚の希望の葉がきっかけとなり、ジョンジーは持ち直してゆきます。
その裏で同じ建物に住む売れない老画家が肺炎になって亡くなります。
希望の葉は老画家がジョンジーの為に雨の中、梯子に登って描いた一世一代の絵画だったのです。
人生の最後に最高傑作の絵が描けたことは間違いがありません。
私はこの素晴らしい物語をブラックユーモアなつもりで、暗い物語として冒涜したのを思い出しました。
無情にも最後の一枚の葉が落ち、それと共にこの世を去るという物語にしたのです。
世の中の現実はそんなものだろうと冷めた気持ちで、希望も期待も夢も無く、どうしたらいいのかも分からないまま、過ごしていた遠い昔が懐かしいですし、今はそれも自分の一部なのだと思います。
できれば暗い後ろ向きな自分と上手く共存しながら、老画家の描いた一枚の葉のような、希望の方にもっと意識を向けたいと思います。
もしかしたら奇跡の救いとは最後の一葉のように、地味でさり気ないところにあったりするのかもしれません。
以前に読んだことのある作品を、改めて楽しむという遊びを見つけました。
昔に読んだことのある作品を、時間が経過して価値観や人生観にも以前とは違いがある今、再度読み直してみることが私の一つの楽しみです。
大半のものは内容は忘れてしまっていて、タイトル名と作者だけが記憶に残っている場合がほとんどですので、以前とは違う自分が新しい作品を読むような感じになることが楽しくて、私の遊び心に火を灯してくれました。
久しぶりに読み直してみると、忘れていたはずの内容が思い出されたり、その作品を読むに至った経緯なども思い出され懐かしさも堪能できます。
まさに一石二鳥のささやかな趣味を見つけた気持ちです。
また今では、著作権が消滅した作品が「青空文庫」という電子図書で無料で読むことが出来るので、大変ありがたいことです。
「青空文庫」とは
インターネットの電子図書館が「青空文庫」です。
「本を電子化して、誰でも読めるようにしておくと面白い」という考えから始まった取り組みで、ボランティアの方々のお陰で成り立っています。
著作権が消滅した作品が集められますので古い作品が中心になりますが、古典の名作が無料で読めることは本当にありがたいことだと思います。
日本の名立たる文豪の作品が軒並み揃っていますし、どの時代になっても色褪せない機知に富んだ作品は、後世まで残していきたいものですので、読みたい時に誰でも読めるという発想と、その取り組みは素晴らしいの一言に尽きます。
様々なテキストで読むことができるようですが、私は愛用している電子書籍〈ブックライブ〉で無料で購入できるのでそちらで読んでいます。
実を申しますと〈ブックライブ〉で0円で購入できる書籍を発見したことから、「青空文庫」の存在を知りました。
〈ブックライブ〉も有料の同じ書籍を取り扱っているにも関わらず、「青空文庫」が読めるように取り計らってくれているのにも好感が持てます。
良い発見をしました。
HanaAkari