「ヴァーハナ」とはヒンドゥー教の神の「乗り物」のことです。
「神一人一人に必ず乗り物が存在しているのが面白い発想です。」
このブログは言葉から連想したことを自由に書いています。時に勇気や喜びをもらえたり、慰められたり、癒されたり、言葉には力があるように思います。そんな素敵さや楽しさを少しでも表現できたら幸いです。
【神の乗り物】インドの神は身近な動物に騎乗します|言葉の小槌78
【神の乗り物】
インド・ヒンドゥー教の神々はそれぞれ「乗り物」に乗っています。
神様によって乗っている「乗り物」が違っていて面白いです。
インドの身近にいる動物が乗り物になっていることが多いのも特徴です。
【ヴァーハナ】 神の乗り物
「ヴァーハナ」とはヒンドゥー教の神の「乗り物」のことです。
シヴァの乗り物【ナンディン】=【白い牡牛】
「破壊神シヴァ」の乗り物は「ナンディンと呼ばれる白い牡牛」。
元々は半人半牛の神だったのが、「白い牡牛」の姿で定着したようです。
シヴァは「踊りの神」の側面を持つので、「ナンディン」はシヴァが踊りを舞う際に音楽を奏でる役割を担っているそうです。
踊るシヴァは「ナタラージャ」と呼ばれます。
インドでは牛は神聖な動物とされていますので、町中には野良牛が我が物顔で、のしのしと徘徊していました。
パールヴァティーの乗り物【ライオン】
「パールヴァティー」は「シヴァ」の妻で「ガネーシャ」の母。
「パールヴァティー」は「インドライオン」を従えています。
インドには「アフリカライオン」とは違う「インドライオン」がおり、現在では数も少なくなり絶滅危惧種ですが、インド・グジャラート州にある「ギル国立公園」の野生動物保護区で保護されながら生息しています。
昔は多くいたのでしょうね。
ドゥルガーの乗り物【ベンガル・トラ】
「ドゥルガー」は「近づき難い者」と呼ばれる恐るべき戦いの女神ですが、「パールヴァティー」の別の姿ともされています。
「ドゥルガー」は戦いの女神だけあって「ベンガル・トラ」を連れています。
「パールヴァティー」は他にも多く呼び名を多く持ちますが、その中でも黒い女「カーリー」という姿は、凶暴性の象徴のような女神で、殺戮と破壊を司っています。
「カーリー」はインド・ベンガル地方(コルカタ周辺の地域)で篤く信仰されていますので、別の姿ですが同じ女神の「ドゥルガー」が「ベンガル・トラ」を乗り物にしているのも頷けます。
ちなみに「カーリー」は夫である「シヴァ」を踏みつけている姿で描かれることが多いので、夫を踏み台にする程の恐るべし女神です。
乗り物は「シヴァ」ということでしょうか(笑)
ガネーシャの乗り物【ネズミ】
象の頭を持つ「ガネーシャ」は「シヴァ」と「パールヴァティー」の子供で、乗り物は「ネズミ」です。
「ガネーシャ」は象の頭と乗り物は「ネズミ」というかなりユニークな神ですが、商売繁盛・学問の神としてインドでは人気があります。
「ガネーシャ」の乗る「ネズミ」は、自分が退治した悪魔を「ネズミ」の姿に変えたものだそうです。
ガンガーの乗り物【クンビーラ】=【ワニ】
「パールヴァティー」の妹の「ガンガー」は「ガンジス川」の女神です。
ヒンドゥー教徒にとってもっとも神聖な「聖なる川」として、篤い信仰の対象になっています。
「ガンジス川」の水で沐浴すると、これまでの罪穢れが一切全て、洗い流されるといわれています。
「ガンガー」の乗り物は「クンビーラ」と呼ばれる「ワニ」です。
ガンジス川には「ワニ」が生息するとは聞いたことはありましたが、本当にいるようです。
「クンビーラ」が変化して日本では「金毘羅(こんぴら)」となり、「金毘羅さん」で有名な香川県の「金刀比羅宮」の信仰の対象は、諸々の変化変容はあっても「クンビーラ」ということです。
また「ガンガー」が天界から地上に降りる際には、直接降りると地上を破壊してしまうので、一旦緩衝場所として「シヴァ」が頭で受け止め、そこからヒマラヤ山中に注いだことから、「シヴァ」の頭の上に「ガンガー」乗っている描写がよく見られます。
「カーリー」に続き「ガンガー」の乗り物は「シヴァ」とも言えそうです(笑)
「ガンガー」については私見がありますので、よかったら「言葉の小槌73 川の女神」も読んでみて下さい。
スーリヤの乗り物【七頭の馬が引く黄金の戦車】
「太陽神スーリヤ」
「スーリヤ」の乗り物は「七頭の馬に引かれて天空を走る黄金の戦車」です。
流石に太陽神だけのことはあるといった貫禄です。
七頭の馬は「七色の虹」を表すとも「七つのチャクラ」を表すとも言われています。
黄金の戦車の車輪は「時の車輪」といわれ、天体である太陽の運行を表し、時を象徴しているようです。
ブラフマーの乗り物【神鳥ハンサ】=【白い鵞鳥】
「創造神ブラフマー」の乗り物は「ハンサ」と呼ばれる「神鳥」の「白い鵞鳥」です。
「ハンサ」は真理や知識の象徴とされる神聖な鳥とされています。
「ブラフマー」は「創造の神」という原初の神様のようでありながら、インドでは人気のない神で不思議なのですが、崇高すぎて人々には受け入れにくかったのかもしれません。
サラスバティーの乗り物【クジャク】
「サラスバティー」は「ブラフマー」の妻で、非常に美しい「芸術の女神」です。
乗り物は芸術の女神だけあって「クジャク」なのがいいですね。
インドでは野生の「クジャク」を普通に目にすることができました。
雄が求愛ダンスを雌クジャクの前で披露する時に、羽を扇状に広げてアピールする所や、意外な感じもしますが空を飛んでいるのも見ました。
羽は綺麗ですが、残念ながら鳴き声は濁声を絞り出したかのようでしたので、姿とは裏腹に幻滅させられました。
「サラスバティー」は古代にあったとされ、今では干上がってしまった幻の川「サラスバティー川」の化身とされていますが、「サラスバティー川」は「インダス文明」の中央を流れていたようで、現在のパキスタン領内ですので、「サラスバティー」はもしかしたら、外国の神様なのかもしれません。
「ゾロアスター教」の「アナーヒーター」という女神と同一との説もありますので、ペルシャ(現在のイラン)出身の可能性はあるように思います。
ヴィシュヌの乗り物【神鳥ガルーダ】=【鷲】
「維持神ヴィシュヌ」はインドでは「シヴァ」と人気を二分する人気のある神です。
乗り物は「神鳥ガルーダ」と呼ばれる「鷲」です。
「ガルーダ」は「ナーガ」族の蛇や竜と敵対関係にあり、「ナーガ」を捕食する「ナーガ」族にとっては天敵の聖鳥です。
「ガルーダ」は「タイ」と「インドネシア」の国章にもなっており、インドネシアの航空会社「ガルーダ・インドネシア航空」のエンブレムにもなっている、凄い「鷲」です。
日本では「迦楼羅(かるら)」と呼ばれます。
ラクシュミーの乗り物【フクロウ】
「ラクシュミー」は「ヴィシュヌ」の妻で、美と富と幸運を司るとても美しい女神です。
「ラクシュミー」は蓮華に乗った姿でよく目にしますが、乗り物は「フクロウ」だそうです。
ヒンドゥー歴によるインドの新年、光のお祭り「ディワリー」では、夜空を「ラクシュミー」が「フクロウ」に乗って各家庭に幸運を運んで回るのだそうです。
サンタクロースのような感じですね。
「ディワリー」の夜には人々はオイルランプを灯し、お供え物を捧げて「ラクシュミー」に幸運を授けてもらうように祈ります。
神の乗り物は身近な動物がモチーフになっているようです。
ヒンドゥー教の神々はいろんな流派や派生があり諸説が多いですが、神様の乗り物「ヴァーハナ」は身近にいた動物と結びついているのが分かります。
神一人一人に必ず乗り物が存在しているのが面白い発想です。
日本の神道の八百万の神と同じような感じですので、万物一切が神だということなのかな?
HanaAkari