「逃げる」のなら「全力で逃げる」と真剣さがあって、ポジティブな行為になるように思いますので、中途半端に逃げずに「全力で逃げる」のがいいのかもしれません。
世の中には場合によっては「逃げるが勝ち」ということもあるように思います。
このブログは言葉から連想したことを自由に書いています。時に勇気や喜びをもらえたり、慰められたり、癒されたり、言葉には力があるように思います。そんな素敵さや楽しさを少しでも表現できたら幸いです。
【逃げる】卑怯者か?敗者復活か?時には大事かも?|言葉の小槌92
【逃げる】
「逃げる」という言葉には、あまりいいイメージがありませんが、時には逃げることも必要なように思うことがあります。
「逃げる」と負けだという風に思ってしまう癖のような感覚があり、どうしてもマイナスのイメージが先行してしまいますが、不毛な事柄と戦っても理が無い事が多いのも確かです。
「逃げる」のなら「全力で逃げる」と真剣さがあって、ポジティブな行為になるように思いますので、中途半端に逃げずに「全力で逃げる」のがいいのかもしれません。
「逃げたい」時の状況にもよりますが、「自分の事」だけの感情でしたら、苦しくても自分自身と向き合うことで、活路が見つかるかもしれませんが、周囲の状況や他人からの影響がある場合は、全力で逃げる覚悟がなければ、活路が見つかりにくいこともあるように思います。
人が関係していて「逃げたく思う」場合は、大抵は人の弱みにつけ込んでくるような事柄が多いようで、中途半端に逃げると逆効果になるようなことが起こってしまう場合があるのが、悲しいことです。
理不尽なことを正当化するようなことがない世の中になれば、逃げるも何も無くなるので、理想なのでしょうが、今の所そうではなさそうなので「逃げる」のもありなんだと私は思っています。
何でも口で言うのは簡単ですが、いざ逃げようと思ってもなかなかそうは出来なかったりするものですが、逃げる場合は何かを捨てないといけないことがあったりして、それが捨てられなかったりするので、板挟みになって心身がもだえてしまうんだと思います。
苦しいですし、腹立たしいですし、切ないですし、悲しいです。
「逃げる」決断をした昔話ですが、今となっては面白いエピソードがありますので、書いてみようと思います。
インドでお金を諦めることで、逃げたエピソードです。
私が若い頃、バックパッカーとしてインドを旅行していた時の話です。
当時、外国人と見ると親切そうに近寄ってきて、インドの相場からはかなりかけ離れた金額で商売をしようとするインド人が普通にいました。
バックパッカーとして長く旅行をしていた私は、インドを旅行する頃にはそういった人が近寄ってきても、その真意が分かるようになっていましたので、深く関わることを避けることができましたので、問題に発展することはありませんでしたが、大学生などの卒業旅行で初めてインドに来ましたという旅行者は、よくトラブルに遇っていました。
私もバックパッカー旅行を始めて、最初にインドに行っていたら、トラブル続きになり二度とインドには行きたくないと思ったことだと思うのですが、たまたまそれまでに東南アジアのお国々を旅行したことが、トレーニングとなっていたので、インド旅行の頃には少し余裕があったのです。
そんな頃、インドのデリーで同じ安宿に宿泊していた、日本人の女子大生二人組がトラブルに遇い、私も巻き込まれました。
巻き込まれたというと聞こえは悪いですが、このままだと危険だと思ったのでわざと巻き込まれたのです。
その日はインドの祭日「ホーリー」という特殊な日でした。
恐い破壊の神シヴァが一年で一日だけ眠る日とされ、そのことから鬼の居ぬ間に洗濯とばかりに、無礼講の何でもありが許される日でしたので女性が出歩くのは危険な日でしたし、男性でも外出すると色の付いた粉をまぶされて、水は掛けられたりと大変エキサイティングなお祭りの日でした。
そのような日でしたので、外出して水に濡れて、色粉まみれになったのを着替えて部屋でゆっくりしていた時でした、宿のインド人スタッフが助けてくれと私の部屋に来たのです。
私はその宿の常連でしたので、私の所に来たのだと思いますが「助けてくれ」「日本人の女の子が外に行こうとしている」「危ないので行くなと言っても言うことを聞かない」「説明してくれ」
そんな感じでした。
実際にホーリーの日に女性が外出するのは本当に危険で、痴漢されに行くようなものですし、レイプされることもあったりで、子供以外のインド人の女性は絶対に外出しませんでした。
実はその少し前にも同じようなことがあったのです。
宿に悪い旅行会社のスタッフが押しかけてきて、日本人女子大生2人組がトラブルになっている時に遭遇したことがありました。
外に出て行ってしまうと相手の思う壺になり危険なので、宿から日本大使館に電話をしてもらい、大使館の人と悪い旅行会社の人と直接話をしてもらって、問題を解決したことがあったのですが、この「ホーリー」の日は祭日ですので、大使館も休みでその手が使えませんでした。
よりよってそんな日に「ぼったくりの旅行ツアーに申し込んでしまったので、キャンセルをしに行く」と、こちらの女子大生二人組は血気盛んなタイプだったのです。
私は今日は外に出るのは危険だから「明日、日本大使館に助けてもらえばいい」と説得しようとしても言うことを聞いてもらえませんでした。
限られた日数で旅行の計画を立てているから、時間が勿体ないので、今日キャンセルに行ってお金を返してもらうと言って、今日は女性が外に出ると危険だと何度言っても駄目でした。
その気持ちはとても分かりました。
私のように自由に時間もあるようなバックパッカーは、そういうものだと開き直って旅行していたので諦められますが、日本人なら旅の計画を練ってインド旅行に来ているのは普通のことですし、日本人らしいところですが、インドでは時に、この予定が障害になってしまう時が多々あったのです。
どれだけ予定を組んでいても、電車が何時間も遅れてきたりするのは当たり前ですし、時には来なかったりすることもあったので、時間通りに事を進めることが当たり前の日本人には、インドの貧乏旅行は天敵のようなものでした。
でもインドに初めて来たばかりの彼女たちには、それは理解出来ないことでした。
どうしても今から旅行代理店にキャンセルに行くと言います。
流石に大問題になるかもしれないので、私は一緒に付いて行くことにしました。
あまりにも危険だったので、その時に同じ宿に泊まっていた、インドで知り合った日本人の男性の友人Yさんに声を掛け、さらにたまたま居合わせた日本人男性旅行者にも声を掛けて、日本人女性2人、男性3人の5人で行くことになりました。
案の定、宿の外に出た途端に酔っぱらって、正気を失っているインド人が女性がいると見るや、群がってきて、やらしいことをしようとします。
初めは壁になって2人の女性をガードしていた私達でしたが、多勢に無勢でどうしようもありませんでしたので、仕方なく数人にグーパンを食らわすと、非暴力の国の人々は去ってくれました。
そんな日でもヒンドゥー教徒でない、シーク教徒(ターバンの人)が運転手のオートリキシャ(三輪の小型タクシー)は営業していましたので、オートリキシャに乗りデリーの繁華街の旅行代理店のあった、コーンノートプレイスに向かいました。
いつもは人で溢れかえっていたコーンノートプレイスも、全くひと気がなく異様な雰囲気でした。
ますますヤバイ状況でしたが、2人の女性は何の躊躇もなく旅行代理店に入りました。
旅行代理店の中には縦に部屋が2つあり、手前側とその奥のガラス張りの部屋とに分かれていました。
その奥の部屋にボスがいて、私以外の日本人は奥の部屋に入りましたが、スペースの関係で私一人は手前の部屋に居ました。
キャンセルの話を持ち出すと、俄かに空気が変わり、私の部屋から外に出るガラスの扉の前に悪そうな連中が立ちはだかるように移動して、私たちが逃げられにようにしました。
もとよりこっちは女性を含めて5人、向こうは屈強そうな男10人くらいでしたので、力尽くで戦って勝てる状況ではありませんし、非常に緊迫した状況でした。
奥の部屋ではキャンセルの話には耳を貸さないボスが、支払った金額の80%の金額をキャンセル料として支払うならキャンセルするなどと言って、無茶苦茶過ぎました。
そもそもの料金自体が非常にぼったくりでしたので、とんでもないことですし、ありえ得ないことなのですが、私たちは蜘蛛の巣に掛かったようなものでした。
私は手前の部屋で煙草を吸いながら、冷静さを装っていましたが、膝は震えていました。
インテリ風のスタッフに、「こんなことしたら日本大使館に言うよ、まずいんじゃない?」とささやかながら抵抗をしてみましたが、「ふん、ここはインドだ」の一言と鼻で笑われて終わりました。
あの忌々しい、にた~っとした口元は、忘れられないですね。
途中でインド人の警官が入ってきたので、助かったかも?と思った矢先、警官はお金を握らされて去っていきました。
賄賂をせびりに来ただけでした。
完全に八方塞がりで、奥の部屋ではボスはナイフも持ち出して「殺すぞ」なんて嘘みたいな展開になっているし、女子の一人は泣き出すし、それでももう一人の女子と男一人は脅しに屈することなく言い争っているし、友人のYさんはとても温厚な性格な人だったので、間に入ってなんとか仲裁していましたが、それで精いっぱいでした。
他の旅行者からはライフルを突き付けられて脅された、なんて話も聞いた事がありましたから、ナイフはまだマシかもなんて思いつつも、まともな事態でないのは間違いありません。
インド人は脅しはしますが、旅行者間の噂では脅すだけで実際に手を出すことは殆んどない、と聞いてはいたものの、現実にナイフがを目の前に突き付けられている人がいれば、そんな悠長に構えてはいられません。
話がキャンセル料50%のところで膠着状態になってしまったので、私はこれではいつまで経っても終わらないうえに、危険すぎると思いインテリスタッフに、「彼らと話がしたいので、ボスにそう伝えて欲しい」と切り出し、全員というよりも女性2人と「どうする?」のかを少し話し合いました。
私は納得がいかなくても50%の金額を返してもらい、帰りましょうと提案しました。
2人は納得し、一旦それで区切りが着いたので、50%のお金を返金してもらい女性から外に出ていきましたが、私ともう一人のファイターの日本人男が出る前に再び扉をロックされ、2人だけが取り残されました。
理由はファイターがレシートを手に握り占めて、返さなかったからです。
レシートがあれば後からでも証拠になり、まだ何とかできる可能性があるので、彼はレシートを渡さずに頑なに守っていたのですが、相手もそれが分かっていますから当然揉め事になります。
これ以上は危険だと判断した私は、レシートを渡すように促し、外に出ました。
納得のいかないお金を支払った形でしたが、お金よりも逃げた方が良いと思った出来事でした。
これは特殊なケースかもしれませんが、世の中には場合によっては「逃げるが勝ち」ということもあるように思います。
HanaAkari