「オネアミスの翼」王立宇宙軍  飯野文彦著 を読んで

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オネアミス の翼〈読書感想文〉 〈日本人〉作品を読んで
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時代が「オネアミスの翼」王立宇宙軍に、追いついたかのようでした。

古本屋で掘り出し物を見つけると嬉しいものです。

私が中学生と高校生の境目だった時、「オネアミスの翼」王立宇宙軍のアニメ映画が公開されました。

何といえば的確なのかが難しいのですが、今でもとても印象に残っていて、大好きになった映画だったのですが、大感動して涙がこぼれるといった類のものでもありませんでした。

気の抜けた名作という感じでしょうか。

〈リイクニ・ノンデライコ〉、〈シロツグ・ラーダット〉とおかしな主人公の名を今でも忘れずに覚えていましたが、憶えておかないとちょっと憚りがある人の名は、ちっとも憶えられないのに変なものです。

印象深いけれどもしつこくない、全体的に脱力感のある映画だったなぁ~と思いながら、私にとっては掘り出し物の古本「オネアミスの翼」を読み始めました。

ロケット

書籍版にはオリジナルストーリーも含まれていましたが、なんとなく内容は分かっていたので、気構えて読む方が失礼になりそうな気がしたので、お酒を共にしながらの読書を楽しませてもらいました。

テレビの画面には音を消した卓球の試合が流れていました。

お酒の効力もあって空想も冴え、あの頃から色褪せることのないオネアミスの世界観に没入したのですが、昔の思い出というよりも、近年の状況が「オネアミスの翼」に追いついたのではないのかと思うのでした。

「王立宇宙軍」という響きが格好いいのですが、現在世界の国々では実際に「宇宙軍」が設立されるようになり、抗争の舞台が宇宙にも広がっていくところなんかが、「オネアミスの翼」はこうなるのを予見していたのだとさえ思います。

中学生と高校生の境目の時の私が、ぼんやりとした感じにしか受け取れなかったのが理解できました。

とぼけた人間関係によってカムフラージュされながらも、戦争の無くならない絶望的な人間社会に対して一縷の望みを含ませていたのだと感じました。

この物語は〈シロツグ・ラーダット〉が人類で初めて宇宙に行くストーリーで、初めはだらけた調子なのですが、物事を成し遂げるには「責任」や「犠牲」が後から伴ってきて、戸惑いや痛みが渦を巻いてきます。

単に夢を追って宇宙を目指すといった平和ボケしたものではない、血生臭い抗争を孕みながら、戦争の最中に命を懸けて宇宙を目指すところに現実感がありました。

スペースシャトル

しかしながら、〈シロツグ〉が宇宙から地上の人々に送った言葉に希望が残されているようでした。

どんな方法でも構わないので、これまでは神の領域であった宇宙に人間が到達できたことに対して「神に祈りを捧げてください」と〈シロツグ〉は静かに語ります。

人々が生きることが出来る一つの星を与えて下さったことに感謝します…

宇宙に行き、宇宙から地球を見た人は価値観、人生観が変わると聞いたことがあります。

地上の偉大なる指導者たちは、是非とも一度宇宙へ行ってもらいたいものです、地球の為、人類の為に…

またこの物語の最後のシーンは好き嫌いが分かれるかと思うのですが、私はとても意味深く切ないのが気に入っています。

〈リイクニ〉は神の教えを人々に伝えようと孤軍奮闘する少女です。

「どうか神の声に耳を傾けて下さい」彼女は訴え続けます。

神の言葉を綴ったチラシを人々に手渡そうと街頭に立って言葉を発しますが、いつものように誰にも相手にされません。

雪がひとひら彼女に舞ってきました。

その頭上の宇宙には〈シロツグ〉がいます。

雪

アニメ映画「オネアミスの翼」王立宇宙軍・・・再見と感動シーン

世界設定から映像、人物像、ストーリーと、この映画は独特なカオスが魅力です。

特に登場人物にヒーロー性がなく、脇道にちょっと逸れた感じのする普通の人が、だらしないながらも懸命に息づいているのが、共感も出来て少し嬉しくなります。

〈シロツグ〉と〈リイクニ〉の妙な恋愛模様にも想像を膨らませてしまいます。

主人公の〈シロツグ・ラーダット〉の声を、〈森本レオ〉氏が吹き込んでいるのですが、そのだるそうな脱力感のある声が癖になってきます。

さらに音楽チームは〈坂本龍一〉氏が率いているのですから堪りませんし、素晴らしいです。

キャラクターデザインは、〈貞本義行〉氏で、代表作には「サマーウォーズ」や「エヴァンゲリオン」など、知る人ぞ知るところです。

改めてみると豪華なキャストです。

私が個人的にエモーショナルな気持ちになるのは、最後に〈シロツグ〉が宇宙へ到達した時のシーンでした。

衛星

〈シロツグ〉の人生を遡って回想されているのが、いつしか人類の歴史を回想しているようなのですが、一つ一つの場面がまるで走馬灯のように切り替わります。

この走馬灯のような既視感が起こる時は、思考から外れている感じがして魅力的です。

美しい音楽と共にそれぞれの胸に語り掛けてくる静かな時間。

そんな時間が〈リイクニ〉が登場する意味深いシーンに繋がり、エンディングへと向かう。

エンディング曲の心地よい音に包まれて余韻に浸り、しばし放心状態になりました。

HanaAkari

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